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発明から社会と技術の関わりを見る①「アイロンが回転?!」

2014.03.12

なぜ、人は新しい技術を生み出すのでしょうか?

「研究開発が仕事だから...」という声が聞こえてきそうです。
しかし、本当にそうなのでしょうか?

 

ネオテクノロジーは、“技術は社会に役立つためにある”と考えます。
人が集まって社会が形成されます。社会の変化とともに課題が生まれ、人はその課題を乗り越えるために技術を生み出します。そして、技術革新は産業の発達を通じて国の経済を活性化させ、ひいては人類の文化と生活の向上に貢献していきます。

 

ネオテクノロジーは、明治~大正~昭和第二次大戦前までの近代化ダイナミズムの中で、発明から生活文化の変遷を見る取り組みを始めました。特許情報を社会の世相や課題が反映されるアーカイブ情報として活用しようという試みです。
「発明に見る日本の生活文化史」
http://www.neotechnology.co.jp/books/social/8537/

 

「歴史は現在を読むデータベースであり、未来を推しはかる物差し」です。
発明に表れる先人達の創造への挑戦を振り返ることによって、現在の私たちが直面している社会変化に取り組む知恵と勇気を得ることができると考えています。古い特許情報に表れている創意工夫(発明)を見ると、当時の社会背景や課題、人々の生活様式や考え方などが浮かび上がってきます。そして、技術が生活を向上させる役割を果たそうとしていることがわかります。

 

これからほぼ毎週、私たちが古い特許情報から垣間見たことを少しずつお伝えしていきます。お仕事のブレイクタイムにお楽しみいただければ幸いです。どうぞお楽しみください。皆様からの声や感想をお待ちしています。
最初に取り上げたのはアイロンです。
“生活の知恵”と言いますが、身近な生活道具にこそ社会と技術の変化が表れると考えました。アイロンは今では当たり前の生活道具ですが、昔は炭火を使った“火熨斗”が使われていました。どのようにして、現在のアイロンの姿になったのでしょうか。

 

明治~昭和初期のアイロンの発明を総覧してみると、“回転”させる工夫がたくさんあることに気が付きます。現代のアイロンで回転するものはありません。なぜなのでしょうか。そこに現在と異なる生活文化があったに違いありません。ここでは、“回転”させるアイロンの発明を通じて生活文化の変遷をとらえてみます。

 

火の上昇する性質を利用

 

火焔は上部に上昇するために、上面の方が下面よりも温度が高くなります。これを利用して上面と底面を回転させる発明があります。アイロンの底面を温めるために火が上昇する上部に底面を向ける、蓋が下になるので蓋が灰受けになる発明(特許第15739号)があります。また、上面と底面を両面活用する工夫として、上面と底面を180度回転させて、よく熱した上面と冷たくなった下面をひっくり返す発明があり、瓦斯を用いるもの(特許第21361号)、アルコールランプを用いるもの(特許第21554号、特許第23281号など)があります。

 

燃えるのを防ぐ

 

火熨斗の場合、炭の灰の飛散による火災や、アイロン体と布地の接触により布や畳が焼けてしまうこともあり、火熨斗掛けは危険を伴うものでした。そこで、アイロンが布にあたる面を回転させて燃えるのを防ぐ発明があります。
円筒形のアイロン内部に炭を入れてローラーのように回転させる発明(特許第14413号)は、アイロンが回転して布に接する面積を小さくして布が焼けるのを防いでいます。大正に電気アイロンが導入されますが、昭和に入っても炭火アイロンが用いられていました。特許第131742号は上述の特許第14413号のようなローラー状のアイロン体ですが、円筒状のアイロン体の内部に炭を入れて回転させることにより、炭が常に下位にあるため灰が飛散させない工夫です。これら2件の発明は、形だけを見ると現在のローラー状のごみ取り器を想像しますが、火熨斗ローラーの目的は回転させることによって安全性を確保しようとしていることがわかります。

 

アイロンを布や畳の上に放置したままで使用を忘れてしまい、燃えてしまうことを防ぐための発明があります。アイロン使用時にアイロンを手で押すことによってローラーまたは橇板は押し下げられてアイロン底面は布面と水平になるが、不使用時にはローラーまたは橇板はばねの弾力によって傾斜してアイロンの台脚となる発明(特許第101991号)があります。また、アイロン内部の歯車にラチェットを設けて歯車を常に一定方向に回転させることにより、鏝を常に一定方向に回転させて誤って失敗しないようにさせる発明(特許第116982号)があります。

 

熱を最大限に活用する“モッタイナイ”の精神

 

アイロンによる熱を最大限に活用しようとする工夫が見られます。大正に電気アイロンの発明が登場しますが、この頃の発明は外国人の発明であり、一般庶民には手が届かなかったものと思われます。昭和に入り電気が普及し始めると、日本人による発明で電熱線を用いるアイロンが見られるようになります。昭和の発明の中に、アイロンによって温められた熱を、アイロンと別の用途に用いようとする工夫が見られます。アイロンとブラシ(特許第95114号)、アイロンと調理器(特許第100903号)の発明です。

 

以上に見てきたように、アイロンの“回転”を通じて、当時の限られた条件の中で人々がさまざまな工夫をしてきたことがわかります。燃料が炭火やガス、アルコールだった時代には、火が上昇する性質を利用するものだったり、また、炭火の灰が飛び散って火災が発生するのを防止したりするものでした。また、電力がまだ豊富にない昭和初めには、電気による熱を最大限に活用してしまおうというものでした。

 

限られた資源をいかに有効に使い尽くすか、日本人は古くから生活の知恵を身に付けてきました。かけがえのない資源に対する尊敬も含まれていることでしょう。日本人の持つ“モッタイナイ”精神が表れている発明は、現在のエネルギー問題や環境問題を見つめ直すキッカケを与えてくれます。

 

 

「発明から社会と技術の関わりを見る」第1回はいかがでしたでしょうか?
次回は、大正時代の創業者たちを取り上げます。どうぞお楽しみに。

(H・I・H)



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