本書の特長

本書は、いわゆる嗅覚に関する技術を調査対象としました。匂いの利用技術や、匂いの元となる物質材料、芳香剤や消臭剤、臭いのマスキング技術のほか、匂いが密接にかかわる食品技術、匂いのセンシングや計測技術なども調査の対象としました。このように、嗅覚に関わる臭いや香りを特徴として取り上げる技術（積極的嗅覚技術）を対象にしましたが、嗅覚を排除する技術（消極的嗅覚技術）や、嗅覚を視覚などの他の感覚と同列に扱う技術（嗅覚を特徴とはしない技術）は対象としていません。嗅覚に言及する膨大な特許情報の中から嗅覚に特徴がある特許情報だけを選び出し、嗅覚に注目した発明から技術の動きを探り出すためです。
なお、この調査では、用語としての「匂」、「香」、「嗅」、「におい」の意義によらず、類義語として扱っています。本報告書の説明でも、これらの語句は引用した公報明細書などの原文に基づいて使用し、用語の統一は行っていません。

本シリーズ「“ひと”と技術シリーズ」のねらい

本書は、人間が安全安心に豊かに暮らすために、物質的豊かさと心の豊かさを調和させるための技術をテーマとし、人間の感情や感覚と技術の関わりを特許情報から見ていきます。“人間の感情や感覚”は、心理学や生理学、工学などの複数の領域にまたがる新たな未知の領域です。ネオテクノロジーは、人間の感情・感覚と技術の関わりを未来技術として捉え、その未来技術を探る方法の一つとして、最新の特許情報に表れる発明の動向に注目します。特許情報に表れる先進的な企業や研究機関の取組みを特許情報から俯瞰します。人間の感情や感性に合わせた高付加価値化をねらう次世代R&Dのための刺激情報として、本書をお役立ていただきたいと願っています。

I. 現状把握
1. 特許情報の調査
2. 最近の特許情報から見た嗅覚の現状
食品の観点／芳香の利用の観点／
消臭・脱臭の観点／臭気を逃がさない観点／
製薬・ヘルスケアの観点／計測評価の観点／その他

II. 嗅覚と人間の関わり

III. 注目したいR&Dの可能性
1. においの計測
2. においと脳の関係
3. 人間の感覚の及ばない未知領域

IV. 付属資料　調査方法と履歴

●特許情報に基づく、現状把握と注目R&Dの可能性。
●人間の感情・感性に合わせた高付加価値な技術開発のためにぜひお役立てください。