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今の時代の特許戦略
日本は変わりつつある
 営々と築き上げ繁栄を享受してきた日本式社会主義体制に亀裂が入り、崩壊に向けて坂を転げ落ち始めて早七年にならんとしています。それは徐々にではあれ、資本主義社会への変革を、国際社会から余儀なくされていることに他ならない。
 日本だけが世界の中で特殊な体制を保持し、且つ、世界標準(グローバルスタンダード)に対してダブルスタンダードの存在を平然と主張することを世界が許さなかったというのが本当のところでありましょう。
 そういう意味では、バブル崩壊以降のこの長引く不況の原因は、まさに社会体制の崩壊による混乱にあるという非常に単純な図式がそこに見えてきます。
日本独自の特許運営
 この様な資本主義社会への変化は、少しずつ日本の特許の考え方にも、影響を及ぼしつつあります。
 福沢諭吉によって欧米の特許制度が初めて日本に紹介され、明治4 年の太政官布告により始まった日本の特許制度は、当時の富国強兵政策の流れにのり産業育成の効果を上げると共に、第二次世界大戦後の日本の経済復興にも多大な貢献をもたらしました。
 しかしながら、この特許制度は表向きは西欧の制度を、そのまま取り入れたかのように見えますが、運用に当たっては日本独特の解釈が加味されました。
 それは、技術の進歩は国民全体で共有し、一握りの人達が富を独占することを極力排除するという、日本社会主義の根幹をなす思想が取り込まれていたのです。この様な通産官僚たちの高邁な(?)精神はつい最近まで脈々と貫かれて参りました。そこでは、特許の権利範囲をできる限り限定し、他の人達は周辺で権利を分かち合いながら主張することができるようにし、競争相手との共存を可能ならしめるようにするということでした。つまりは投網を投げて全体を捕らえるような特許権利の主張は、従来あまり認められませんでした。
 これこそが世界に誇る日本の護送船団方式の一つの象徴的スタイルでありました
特許は先進国並に
 それが最近になって変わりつつあるようです。規制緩和という言葉がふさわしいのかどうかは分かりませんが、通産省/特許庁も世界的な潮流を無視し得なくなってきたと言えるでしょう。上位概念や、網羅的な権利を主張することを認めざるを得なくなってきたようです。特許の世界にも本格的な競争原理が成立つようになってきました。そのような社会の流れの中で、これからの企業の特許戦略は、
従来とは比較にならないほどシビアで重要なものにならざるを得ません。
 まさに生き残りをかけた戦いが始まるとも言えます。
特許を制することが大切
 もともと資本主義社会は競争社会であり、富の集中、一人勝ちを容認するシステムですからそこに敗者が存在することは避けられません。特許戦略的にも、如何に重要な権利を取得することができるかが、企業の勝敗を分ける大きなポイントになってきます。それにより、支払う側になるのか、支払いを受ける側になるのかによって、収支はプラス・マイナスで二重に効いてくることになります。
 当然勝ち残るためには支払いを受ける側になることが不可欠になります。
知財部がなすべきこと
 そのために企業側は強力な知財・特許部門のスタッフを育て、また開発技術陣の意識を高める努力が必要となります。特に知財スタッフには、単に技術的知見に富むということだけにとどまらず、社会情勢の変化、社会インフラの進歩、周辺技術の推移などを的確に掴み企業戦略としての特許を取り扱える資質を備えていることが要求されます。
 また彼等には強力な特許出願、特許の戦略的運営のために、それなりの権限を与え、時には社内の開発技術現場の人事的な再構築なども視野に入れた、幅広い判断をできるようにすることが非常に重要になります。特に大企業においては、事業部制などによって完全な縦割り構造になっている場合には、同じ社内にありながら、横の部門からの重要な情報を聞き漏らしてしまったり、事業部によって開発の方向性が食い違ってしまうようなことが起きてしまいます。時にはこのことが事業部制のメリットとしてカウントされることがありますが、往々にして弊害の場合が多いようです。知財部門はそのような体制から一歩はなれたところから、社内全体を見渡すことができる部門と位置付けて全社的な開発動向を把握し、時には、ある開発案件に就いて、社内体制の見直しをして、迅速且つタフな開発を円滑に推進できるような、組織に再構築する事まで行えるような権限まで与えてもよいのではないかと思います。
 いずれにしても、今後益々知財部門の役割が企業にとって重要になることは間違いなく、経営的に如何に知財部門を活用し、戦略的に反映できるかが、企業の今後の命運を左右することになるでしょう。
Y.S            
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