健康増進アプリと連動した商品販売


健康寿命を延ばすために、未病に取り組む動きが広がっています。日本は世界でもトップクラスの長寿を誇りますが、日本人の平均寿命と、健康的な生活を送ることができる健康寿命の間には、約10年のギャップがあると言われています。今回注目したのは、病気の予防に関する課題をユーザに認識させるとともに、ユーザにタスクを遂行する動機付けを行うことができる情報処理システム(特開2021-136041、サントリーホールディングス)の発明です。


未病とは

「未病」という言葉をよく聞くようになりました。「未病」とは何でしょうか?未病とは、「発病には至らないものの健康な状態から離れつつある状態」のことを指しています。自覚症状はなくても検査で異常がみられる場合、自覚症状があっても検査では異常がない場合に大別されます。病気ではないけれど健康でもない状態、つまり、「だるい」「疲れやすい」「冷える」といった、私たちがよく感じる不調も未病といえるでしょう。


未病を考えるにあたって、重要になるのは生活習慣です。自分の生活習慣を見直すことで病気を予防し、病気になる時期を遅らせることにつながるからです。病気の発症を遅らせることは、日常生活に支障がある期間をできるだけ短くし、健康な状態で過ごせる期間(健康寿命)を延ばすことにつながります。これからの超高齢社会で、「未病対策」は健康寿命の延伸につながる大切な視点といえるでしょう。


未病のためのタスク動機付け

この発明は、病気の予防に関する課題をユーザに認識させるとともに、ユーザにタスクを遂行する動機付けを行うことができる情報処理システム(特開2021-136041、サントリーホールディングス)の発明です。


この発明の全体フローは下記の通りです。この発明はスマートフォン用アプリケーション(アプリ)を想定しており、アプリの画面遷移は図18に示されています。


  1. ユーザが生活習慣に関するアンケートに含まれる2以上の設問に回答する(S12)
    システムが、ユーザの2以上の回答と、第一対応情報と第二対応情報とを用いて回答により得られた4つの未病領域識別子毎のスコアを表示し、ユーザが遂行するタスクを出力する(S14、S22)
    (ユーザがタスクを遂行する)S41

  2. システムが、ユーザのタスクの遂行情報に基づいて判断し、ユーザに商品または商品を取得可能なクーポンを付与する(S25)


健康増進アプリと連動した商品販売

この発明のもう一つの注目点は、付加価値の高い商品をただ並べて売るのではなく、健康増進アプリと連動させ、ユーザが未病のための健康意識を動機付けし、ユーザの健康増進を図ると共に、自社商品の販売促進にもつなげようしているところです。


出願人であるサントリーは、特定保健用食品(トクホ)飲料のビジネスを手掛けています。「伊右衛門 特茶」や「胡麻麦茶」など、テレビコマーシャルを見たことある人も多いでしょう。これらのトクホ飲料は、ダイエットしたい人や、血圧や血糖値が気になる人を中心に、その手軽さから広がりを見せています。しかし、同じ500ml入りの緑茶「伊右衛門」と比較すると、特茶の価格はおよそ1.2倍。あまり効果が実感できない人にとっては、毎日のように飲む飲料でこの価格差は小さくありません。


アプリケーションと連携することによって、一過性のものではなく、続ける価値を作っていくことも大事な工夫です。健康に良い商品(付加価値商品)を作るだけでなく、続けるための工夫(継続価値)は、これからも重要になってくるのではないでしょうか。アプリと連動した商品販売は、ユーザとの直接交流ができ、自社商品のファンを増やすための取り組みとしても注目されます。


《参考》サントリーWEBサイト



継続価値としては、最近注目されているサブスクリプション(継続課金)形式のビジネスも注目されています。その一つとして、生命保険会社による健康増進型生命保険もあります(住友生命「Vitality」、明治安田生命「健康キャッシュバック」)が有名です。健康増進型生命保険は、健康な生活を送るためのインセンティブを与えているところが、今回の注目発明と共通します。

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