営業トークナビゲーション


昨今の新型コロナウィルスの影響により、営業活動のほぼ全てがオンラインになりました。私はほとんど毎日、様々なお客様とWEB面談を行っていますが、お客様の情報収集手段がWEBにならざるを得ないからか、お客様は積極的にWEB面談を受けてくださっている印象があります。また、私自身も移動時間を節約でき事前準備を丁寧にすることができたり、新人を同席させてOJT教育ができたりという、オンライン営業の副産物も享受しています。今回取り上げるのは、商談において、その時々の会話の状況に応じて営業担当者が次に何を話せばよいかを適切にナビゲートし、商談をスムーズに進めることができるようにする、営業トークナビゲーションの発明です(特開2021-009535、ブリッジインターナショナル)。


BtoB営業マーケティングのオンライン化

いままで、BtoBビジネスにおいては、展示会やセミナー、テレアポ、郵送DMなどの対面・オフラインの営業マーケティングが主流でした。しかし、昨今のコロナ禍が企業のデジタルトランスフォーメーションに拍車をかけました。BtoBでの購買行動においても、オンラインで業者を探し、オンラインで営業を受け、オンラインで業者を選定するのが当たり前になりつつあります。アフターコロナでも、BtoB取引におけるデジタル化、オンライン化は、企業を存続させるための必須要件になってきたと言っても過言ではないでしょう。


営業スキルの属人化問題

営業スキルは属人的だと言われます。実際に、多くの契約を獲得できる営業担当者と、なかなか契約を獲得できない営業担当者がいます。しかし、営業活動とは、お客様が何を課題としているかを把握し、自社の商品・サービスの知識を持ち、その両者をつなぐ活動なので、一定の訓練を積めば、一定の割合で成果につながります。そういった営業活動のパターンや型を、営業ノウハウとして社内で共有していくことが重要になります。

優秀な営業担当者の営業トークを録音して分析することで、顧客と商談をする際の営業トークをドキュメント化し、ドキュメントに記載された所定事項を所定の手順に従って説明する、マニュアル的営業トークを行うことがあります。しかし、実際には、ドキュメントとは異なる想定外の質問や、話が別に逸れてしまったときに、融通性が欠け、軌道修正できなくなってしまうという問題があります。


営業トークの内容を分類化

そこで、柔軟な会話の中で進められる商談において、その時々の会話の状況に応じて営業担当者が次に何を話せばよいかを適切にナビゲートすることができれば、商談をスムーズに進めることができるようなります(特開2021-009535、ブリッジインターナショナル)。

この発明は、営業担当者と顧客との一連の会話音声を分析することにより、営業担当者による発言と、顧客による発言とを識別し、それぞれの発言内容を分析して、営業担当者・顧客ごとに、個々の発言に対してその内容に応じた分類をそれぞれ付与します。そして、ある発言について付与された担当者発言分類と、ある発言について付与された顧客発言分類との組み合わせに応じて、営業担当者が次に話すべき内容を提案します。

発言への分類は、商談の進み具合やそのときの営業担当者および顧客の発言の意図に応じて動的に変わります。動的に変わる発言分類に応じて、営業担当者に提案される内容も動的に変化していきます。これにより、柔軟な会話の中で進められる商談において、分類によって示されるその時々の会話の状況に応じて、営業担当者が次に何を話せばよいかを適切にナビゲートし、商談をスムーズに進めることができるようになります。


発言内容の分類化

図3は、担当者発言分類部14により付与される営業担当者用の分類(担当者発言分類)および顧客用の第1~第3の分類(顧客発言分類)の一例を示します。

図3(a)のように、担当者発言分類は、営業担当者による発言の意図に応じた分類の一例として、9個の分類を設定しています。
また、図3(b)に示すように、顧客発言分類については、顧客2による発言の意図に応じた第1の分類の一例として、26個の分類を設定しています。
また、顧客2による発言のポジティブ度またはネガティブ度を示す第2の分類の一例として、ポジティブまたはネガティブの2つの分類を設定しています。
また、営業質問の基本フレームワークを示す第3の分類の一例として、BANT(Budget:製品・サービスを導入するための予算、Authority:稟議を承認するための決裁権、Needs:顧客ニーズ、Timeframe:導入時期)のうちB,A,Tの3つの分類を設定しています。


N:顧客ニーズに関しては、第1の分類の中で詳細に設定しています。


この第1の分類の中には、26個の中にB:予算,A:決裁権,T:導入時期の3つの分類に相当するものも含まれています。すなわち、第1の分類は、顧客2による発言の意図を、BANTに沿って分類したものとなっています。
第1の分類とは別にB,A,Tに関する第3の分類を設けているのは、3つの分類のみで学習済みモデルを作成した方が分類精度を高くすることができるからです。
第1の分類の中にB,A,Tの3つの分類に相当するものも含ませているのは、これらとの関係でNの分類精度を上げることができるからです。
26個の第1の分類でBANTの全体を網羅しつつ、特にNに関する分類を詳細に数多く設定して何れかに分類されやすい状況を作り、かつ、3個の第3の分類でB,A,Tの何れかの分類が付与されやすい状況を作り出しています。


発言内容分類に基づくテーマ提案

図4は、担当者発言分類と顧客発言分類との組み合わせに応じて生成されるテーマ提案情報の一例を示す図です。

なお、テーマの提示だけでは、具体的にどのように発言すればよいかについて迷う営業担当者がいるかもしれません。
そこで、営業担当者が次に話すべき内容のテーマに加えて、発言の具体的なフレーズ(以下、フレーズ提案情報という)を更に提案するようにすることもできます。
例えば、「予算の確認を!」というテーマ提案情報に対して、「予算としてはどのくらいを想定されていますか?」、「コストで具体的な数字はありますでしょうか?」、「月額何万円ぐらいといった明確な金額などはございますでしょうか?」などのフレーズ提案情報を加えて提案します。


営業トークのタイムライン整理

図5に例示する表示画面は、営業担当者により発言された内容(営業担当者音声から変換されたテキストデータ)と、顧客により発言された内容(顧客音声から変換されたテキストデータ)と、テーマ提案情報およびフレーズ提案情報とをそれぞれタイムライン形式で表示しています。

図5から分かるように、顧客による1回の発言ごとに提案情報が表示されています。すなわち、営業担当者の発言1と顧客の発言2との組み合わせに応じて1つ目の提案情報が表示され、営業担当者の発言3と顧客の発言4との組み合わせに応じて2つ目の提案情報が表示され、営業担当者の発言5,6と顧客の発言7との組み合わせに応じて3つ目の提案情報が表示されています。
営業担当者と顧客との会話が進むに従って、それぞれのタイムラインが画面下方向に伸びていきます。

このように、柔軟な会話の中で進められる商談において、分類によって示されるその時々の会話の状況に応じて、営業担当者1が次に何を話せばよいかを適切にナビゲートし、商談をスムーズに進めることができるようになります。



営業マーケティング活動がオンライン化されたとしても、営業活動の基本的な考え方や、型、パターンは普遍的なものです。最近では、様々な営業デジタルツールが販売されていますが、ツールに振り回されることなく、自社の営業活動の最も重要な要素を明確に、その重要要素に対して、ツールを有効に活用することが重要だと思われます。

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