遠隔医療と視力ケア


毎日、私たちは目を使って何かしらの作業をしています。PCやスマートフォンを利用する機会がますます増えたことによって、私たちは知らないうちに目を酷使しています。目の健康や適切な視力維持は重要なのですが、眼科医での診察は予約の待ち時間が長かったり、何度も検査したり、とても煩わしいものです。今月取り上げるのは、ユーザが自宅で、タイムリーかつ費用効果の高い方法で、在宅で視力測定を行うことができる発明です(US20200352436、EyeQue Inc.)。



視力の重要性

毎日、私たちは目を使って何かしらの作業をしています。PCやスマートフォンを利用する機会がますます増えたことによって、私たちは、かなり目を酷使しています。周りを見渡しても、ほとんどの人がメガネかコンタクトを使用していて、裸眼で日常活動をしている人はごく少数です。このような私たちの生活環境において、視力測定は、目の健康および適切な視力維持にとって重要です。人間の目は非常に高度な光学システムです。環境からの光は、角膜、瞳孔、レンズで構成される眼球光学系を通過し、焦点を合わせて網膜上に画像を作成します。眼球光学系を通過する光の伝搬は収差の影響を受けます。一般的な目の収差は、焦点ぼけと乱視です。これらの低次収差は、近視や遠視の原因です。目は人体の他の臓器と同様に、さまざまな病気や障害に苦しむ可能性がありますが、代表的なものは、白内障、AMD、緑内障、糖尿病性網膜症、ドライアイなどがあります。


現在、視力検査や測定は眼科医または検眼医によって行われます。通常、患者が予約を入れ、予約を待ち、予約場所(オフィスや診療所など)に移動し、列に並んで待機し、さまざまなツールを使用して複数の検査を実行するために、異なる専門家と異なる眼科医の間を移動する必要があります。一つの検査予約と次の検査予約のそれぞれの場所での長い待ち時間、さまざまな専門家との検査、検査時間は、多くの患者にとって煩わしいものです。


遠隔医療の可能性

一方で、遠隔医療はこれまでゆっくりと立ち上がってきましたが、新型コロナウィルスのパンデミックにより、急速に医療業界の最前線に押し上げられようとしています。遠隔医療は、電子的な技術を使用して医療サービスを提供するものです。仕事の打合せがZOOMで簡単になったように、医師の診察予約が簡便になりスムーズになります。遠隔医療は、パンデミック時に医療提供者と患者を安全に保つだけでなく、全国の医師に相談したり、地方で治療を提供したりできるようになります。


インターネット上の情報(特に医療情報を含む)の利用可能性、予防医療に対する意識の高まり、遠隔医療の出現は、多くの人が自分の健康を管理することにつながります。現在、血圧や血糖値などをスクリーニング、監視、追跡するための装置は広く普及しています。技術の進歩により、人々は自分の健康状態の診断、予防、追跡をしやすくなるとともに、さらに、多くの人々は、病院での検査や診察等の時間のかかる活動ではなく、自宅で快適にこれらの活動を行うことを好むようになります。


スマートフォンと接続して光学収差を測定する在宅視力検査

今月取り上げるのは、ユーザが自宅で、タイムリーかつ費用効果の高い方法で、自分で眼科測定を行うことができる発明です(US20200352436、EyeQue Inc.)。

例えば、次のようなシーンを想像してください。Aさんは自宅のソファに快適に座ったまま、デバイスを使用して様々な測定を行い、測定データは分析のためにAIにアップロードされます。AIはAさんと医師に分析結果を知らせ、必要に応じてアラートを送信します。深刻な問題(手術など)が発生しない限り、Aさんは病院に出かける必要はありません。他のすべての処置はリモートで行われます(例えば、医師との電子メール/電話/ビデオ会議、眼鏡を注文して自宅に配達してもらう、医師が処方した薬を直接配達してもらうなど)。


この発明は、スマートフォンに接続して使用し、スマートフォンの一部ディスプレイの特性を測定し光学収差を補正するデバイスの発明です。Fig.5はスマートフォンのディスプレイに取り付けられたデバイスを示しています(400がスマートフォン、500が本発明のデバイス)。

使用する手順は下記の通りです。


  • 本発明のデバイスに接続されたスマートフォンのディスプレイ上に、正しいアスペクト比の長方形が表示されます。

  • ユーザは、デバイスのアタッチメントのアウトラインに一致するように、ディスプレイ上の長方形を調整および位置合わせします。

  • デバイスの既知のサイズとピクセル単位の入力長方形サイズを使用して、スマートフォンの解像度、PPI(Pixels Per Inch)を計算できます。

  • ディスプレイ上の画像の位置合わせとスケーリングに使用でき、視力と屈折率の測定を実行することができます。


FIG.6Aは、ディスプレイ上の画像が補正なしでシステムを通して予想される歪みを示しています。この図は、ディスプレイ上の直線がデバイスの光学系を通る曲線に対応していることを示しています。これにより、ユーザが画像を観察して屈折テストを実行しているときに、エラーやあいまいさが発生します。


FIG.6Bは、画像の歪みを制御する従来技術の一例を示しています。ここでは、光学システムの歪みによる線の曲率の影響を最小限に抑えるためにバーの長さを短くしています。この方法の欠点は、曲率が減少しておらず、あまり目立たないことです。線の長さが短いと、多くのユーザが線の観察とテストの実行(バーの位置合わせ)に問題を抱えることになります。


FIG.6Cは、ディスプレイ上の線が事前に歪められて、光学系を通して鮮明な画像を作成する、本発明の解決策を提示しています。バーの間の距離の関数としてバーの曲率のマッピングを作成し、取り付けられたデバイスの光学系を通して観察される直線を作成します(図の線2〜4)。



なお、本発明のデバイスそのものには、直接的には人工知能は記載されていません。特許明細書の中で、上記の想定シーンにおいてAI分析が記載されています。これからは、自宅で体重や血圧を測るような感覚で、視力を計測するようになれば、各個人の視力データを蓄積・追跡することにより、AIを用いた視力低下や回復の予測、各個人への最適な治療提案などにつながると思われます。


出願人であるEyeQue Inc.はアメリカのスタートアップ企業です。どこにいても自分のビジョンをテストし、自分の視力を修正できるようにする光学式スマートフォンアタッチメントとモバイルアプリケーションを開発しています。

https://www.eyeque.com/about/

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