オンデマンド・ワーク・プレイス・マッチング


先日、スケジュールの関係で大阪に日帰り出張しなければならず、その出張の空き時間に、名古屋の取引先とWEB打合せを行いたい、というケースがありました。出張先では、目的の打合せ前後に空き時間があることが多く、その時間を活用できると思ったのです。しかし、実際には、WEB打合せに必要なWiFi環境が整っているか、仕事の話ができるセキュリティが保たれているか、駅からの距離などの条件に合った場所を探すのが一苦労でした。特に、土地勘のない場所での移動なども考慮する必要がありました。こんな時、自分の状況や希望する場所・条件を入力するだけで、適した場所を提案してくれる、というのが今回取り上げる発明です(WO2020153336A1、ACALL)。その時々のユーザの状況に応じて、仕事を行う適切な場所をマッチングします。民泊のビジネス版のようなイメージです。


状況に応じて適切な場所で仕事を行う

図1はこのサービスに登録された、複数のユーザU、複数の場所P、場所のオーナーOが示されています。
場所Pは、ユーザUがさまざまな行動をとることができる空間または場所です。
場所Pは、オープンスペース(屋外)またはクローズドスペース(屋内)でもよく、実空間だけでなく仮想空間でもよく、クラウド上の場所(URLなどで指定されたインターネット上の場所)も含まれます。
具体的には、図1に示すように、会議室、カフェ、共用オフィス、総合事務所、ウェブ会議等のURL、VRが開催する会議室等です。さらに、コワーキングスペース、空港ラウンジ、駅のコンコース、オフィスビルのロビーなども含まれます。


一般的なオフィスビルのロビーでも、簡単な会議棟ができるフリースペースを設置することで、マッチング対象の場所Pになります。
これにより、オフィスビルは、場所Pを提供することで、その事業を新たな収入源として活用することができます。ユーザが条件を入力すると、条件に合った場所の候補が表示されます(図7)




セキュリティの確保、モラルの遵守、管理体制の整備

仕事を行うための適した場所として必要になるのは、情報セキュリティが確保されているかどうか、仕事を行う人のモラルが遵守されるかどうか、勤怠管理などの管理体制が整備されているか、などの仕事環境面です。この発明では、条件設定において、セキュリティ、モラル、管理体制(体制、勤怠管理)を設定することができ、これらを実現した場所の選択が可能になります。


生産性向上のためのAIフィードバック

ユーザUの行動履歴、評価、環境情報を入力すると、AI(人工知能)による分析と可視化が行われます。入力情報は、自動化(Automation)、容易化(Facility)、レコメンド(Recommendation)の形式で視覚化されます。具体的には、例えば、入力情報の関連性または相関性を示す情報が自動的に生成され、ユーザUに提示されます(図10)。

  • 「自動化」には、例えば、生産性低下のシグナルの検出および報告、会議室選択の最適化、会議のアウトプットの参加者間共有、行動に連動した設備の稼働、ユーザUの行動と外部サービスとの連携等が含まれます。
  • 「容易化」には、業務遂行までの行動計画フレームの提供、会議のアウトプットを最大化させつつコストを最小化するフレームの提供等が含まれます。
  • 「レコメンド」には、生産性を向上させる働き方(時間や場所など)の提案、会議室のレイアウトや備品の改善提案、次回の会議開催の提案、健康リスクを回避するための提案、効率的な業務遂行への改善提案当が含まれます。

これらによって、情報の提示を受けたユーザUは、その後、より良い行動や評価を行い、より良い環境で場所Pを利用することができます。



新型コロナウィルスがビジネスパーソンに与えた影響の一つは、仕事をする場所の選択肢が増えたことです。社員の生産性が上がるのか下がるのか、社員同士のコミュニケーション不足やコロナ鬱など、在宅勤務の賛否両論はあるものの、ITや通信技術のおかげで、仕事をする場所は会社だけではない、という認識が芽生えたことは事実です。この発明は、その時々のユーザの状況に応じて、仕事を行う適切な場所をマッチングさせるものです。個人と会社組織の関係や、個人が自律的に機能して完全に仕事を遂行することができるのか、これから変化していくであろう働き方とともに考えさせられます。

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