スマートXX、~メガネの場合~


スマートフォン、スマートウォッチ、スマートスピーカー、スマート家電など、「スマートXX」と呼ばれる電子機器が私たちの身の回りにあふれています。スマートとは、頭が良くて賢い、カッコよくて洗練されている、きびきびとして無駄がない、などの意味がありますが、スマート電子機器の場合は、インターネット接続されていて、各種のセンサデータと組み合わせてユーザに最適な情報やサービスを提供してくれる、そんなイメージがあります。それでは、メガネがスマートになったらどうなるでしょうか。今回取り上げるのは、3種類のスマートなメガネに関する発明です。US20200285062(OPTICA AMUKA)US20200285081(BESPOKE)US20200285069(SOLOS TECHNOLOGY)



学習することで「スマート」になる

スマートな電子機器の特徴は、学習することです。「スマート」という言葉は、電子機器などに使われる場合には「高性能」や「多機能」という意味でも使用されます。スマートな電子機器の代表選手はスマートフォンでしょう。スマートフォンの登場によって、私たちの生活は劇的に変化しました。スマートフォン1台あれば、電話や電子メール、SNSなどのコミュニケーション、交通系ICカードと連動した移動、おサイフケータイでの買い物、ゲームや読書、ドラマなどの娯楽、健康管理、スケジュール管理など、日常生活のほとんどの用事を済ませることができると言っても過言ではありません。スマートフォンを落としたり忘れたりして不便な思いをした人も多いのではないでしょうか。

スマートなメガネ

今回取り上げるのは、3種類のスマートなメガネに関する発明です。それぞれのメガネでそれぞれのスマートさがあります。一つずつ見ていきましょう。

  1. 眼鏡をかけている人の相対位置・視覚調節能力に基づいて、屈折力を計算する
  2. 眼鏡の選択・カスタマイズを自動化・支援する
  3. 眼鏡を介してユーザに情報を提供する

ユーザの焦点に合わせて屈折力を変えるメガネの発明です。

老眼の人は、近距離、特に25㎝〜50㎝の範囲にある携帯デバイスの距離に焦点を合わせることが困難です。
この発明では、携帯デバイス側(携帯電話、タブレット、スマートウォッチなど)の前面カメラと画像処理システムが、適応眼鏡の相対位置を決定します。
携帯デバイスは、ユーザが現在それを使用していることを判別し、携帯デバイスの表示画面に対する適応眼鏡の相対位置を継続的に評価し、この情報を適応眼鏡に伝達、または適応眼鏡に焦点を変更するように命令します(Fig.1A)。



この発明は、自動車の運転者注視検出システムにも適用できます。自動車の運転では、ドライバーは、道路を見ているときの遠距離から車両の計器盤(車のゲージ、車載ディスプレイ)を見ているときの近距離まで、視力の焦点を絶えず変更しなければなりません。これは老眼の人にとって困難です。視線検出システムは、車両の計器盤に対する適応眼鏡の相対位置を決定し、焦点・光学中心情報を適応眼鏡に伝達し、ドライバーの焦点を修正します(Fig.1B)。



適応眼鏡10は、眼鏡フレーム25に取り付けられた電気的に調整可能なレンズ22、24を含みます。27は焦点距離・光学中心です。レンズ22は、複数の要素を含む複合レンズです。ガラスまたはプラスチックの固定レンズ40は、ベースライン光パワーを提供し、2つの電気的に調整可能なレンズ42、44は、ユーザが見ている物体までの焦点距離に応じてレンズ22の屈折力を調整します(Fig.2)。



完全にオリジナルのカスタマイズされたメガネを作成するための発明です。

カスタムフィット、カスタムスタイル、ユーザ固有の解剖学的構造と好みに合わせたメガネを作成するためには、より定量的な分析が必要です。

画像データおよび解剖学的情報の取得・分析
カメラ付き携帯電話からのいわゆる「自撮り」の2D画像のさまざまな特徴を利用して、人の顔の3Dモデリングを生成します。
ユーザが以前に撮影したカメラ画像のコレクション(例えば、既存の写真、フォトギャラリー、ソーシャルネットワークまたはオンライン画像ギャラリー写真などのコレクション)を使用することもできます(Fig.5)。

定量的解剖学的モデルを表す表面メッシュ
定量的解剖学的モデルは、多角形、曲線要素などを含む表面メッシュとして表されます(Fig.8)。メッシュの解像度は、曲率、位置、顔の特徴などに基づいて変更されます。例えば、目や鼻の位置は、他の領域よりも解像度が高くなります。顔の表面メッシュは、正面・側面の顔領域のみをモデル化しますが、目・鼻のみなど、顔のより小さな領域を含む必要な頭全体またはその任意の部分をモデル化することもできます。

レンズの歪みをレンダリングする
視力矯正のための度付きレンズの場合、光がレンズを通過するときの歪みが生じます。このレンズの歪みはユーザがメガネをかけた時の見た目に影響します。そこで、ユーザが第三者からどのように見えるかを確認するために、レンズ付きの眼鏡をユーザの顔に配置すると、レンズを通して見た顔の歪んだビューを表示できます。
眼鏡デバイスを介してユーザに情報を提供する発明です(Fig.24)。

眼鏡デバイスから音声フィードバックを行います。フィードバックは、眼鏡装置に埋め込まれたスピーカーを介した音声フィードバック、眼鏡装置を介してユーザに与えられる振動、眼鏡装置によって媒介されるユーザの環境に位置する装置からのフィードバックなどがあります。ユーザの頭の姿勢や動き、ユーザの動きの欠如を追跡し、ユーザ状態の分析、センサからのデータに基づいて、ユーザが経験している否定的な状態をユーザに思い出させるために、眼鏡デバイスに埋め込まれたスピーカーから音声メッセージを出力します。ネガティブな状態とは、動きの頻度の欠如や、長時間にわたって頭部の静止位置を維持するなど、ユーザに差し迫った、または将来の何らかの不利益が発生する可能性がある状態です。

ユーザのコンテキストを決定し、ユーザへの支援を行います。


スマートな電子機器の特徴は、学習することです。ユーザ属性やユーザの日々の行動、周辺の環境データを取得して学習することで、電子機器が「スマート」になります。今後、IoT(モノのインターネット)の普及に伴って、あらゆるモノがインターネットに接続されることで、さまざまなデータを組み合わせて活用することができるようになり、多くの製品に「スマート」という言葉が使われるようになると思われます。身近なものに情報を学習させることで、新しい便利さが生まれ、今までになかったビジネスにつながる可能性があります。

特許レポート オンラインショップ