Sales Techが営業活動を変える


営業領域で注目を集めているSales Tech(セールステック)。文字通り、「Sales」営業活動を、「Tech」テクノロジーの力で効率化することを意味しています。Sales Techが注目されている背景には、新型コロナウィルスの影響で、今まで通りの対面型営業が困難になり、各社が非対面でも営業成果を得られる体制づくりを急いでいるという背景があります。今回注目したのは、参加者の顔に名刺を接続し、出席者の会議着座と参加者の顔を一致させる発明です(US20200242332、IBM)。



BtoB営業とテレワーク

新型コロナウィルスによって、半ば強制的に、他者と接触しないテレワークが浸透してきました。多くのビジネスパーソンは、戸惑いながらも、社内チャットツールやWEB会議ツールを試行錯誤して、社内コミュニケーションを図り、日々の業務やプロジェクト推進を行っています。

それでは、BtoBビジネスにおける営業活動は、テレワークで可能なのでしょうか。新規顧客開拓や、既存顧客との関係構築や情報収集のための定期訪問、商談交渉のための営業打合せなど、業種によって差はありますが、BtoBビジネスにおける対面営業活動のウェイトは比較的高いと思われます。例えば、大手商社の伊藤忠が営業担当者を制限付きで出社対応に切り替えたり(その後、社員に感染者が出て全面在宅化)、全国を飛び回る営業網に強みを持つキーエンスが感染防止策を実施した上で出社勤務に戻したり、各社で最適な営業体制の模索が続いています。

ビジネスの環境が目まぐるしく変化する中で、ただ売ることだけに長けた営業マンの存在価値は低くなっていくでしょう。これから求められるのは、売買行為に加えて、顧客価値創造やマーケティング活動と連動した組織的な営業活動です。顧客に会うまでの段取り設定や、既存顧客や見込み顧客に対する営業活動の経歴、自社が営業し始めてからの顧客動向の詳細記録に基づいて、顧客を共感させ「ぜひこの商品・サービスを使ってみたい」と思わせるための一連の活動が重要になります。このような営業支援には、デジタル活用が重要な役割を担っていきます。



会議参加者の顔と名刺情報を接続する

WEB会議システムで営業打合せを行う機会も増えてきました。しかし、オンラインで名刺交換するビジネスマナーが未だ定着していないからか、会社名と氏名を名乗るだけで、すぐに本題の打合せに入ってしまい、戸惑うことがあります。相手が、どのような部署で、どのような役職なのかわからない、あるいは、名乗ったとしてもメモしきれないことがあるからです。通信回線の圧迫を防ぐためにカメラをオフにしている場合も多く、どんな表情で話を聞いているのか、相手の様子を窺いながら話を進めることが難しいこともあります。

この発明は、会議参加者の顔と名刺情報を接続し、会議室内の着座場所と参加者の顔と名刺情報を一致させるための工夫です(US 20200242332、IBM)。この発明では、対面による会議を想定しています。よくあるケースは、初対面の会議参加者の人数が多い場合、参加者の名前と顔が覚えられない場合です。この発明は、上述した非対面によるオンライン会議における名刺交換の課題にも共通して適用できると思い、取り上げました。

Fig.1は全体のフローを示します。

  • 名刺情報のスキャン
    ステップ101では、会議の開始時、開始前に出会った出席者の名刺が取得され、スキャンされます。

  • 顔画像の取得
    ステップ102では、カメラが、ホストが名刺を交換した会議出席者の写真を撮ります(画像を取り込みます)。名刺情報とホストに名刺を渡した出席者の画像がリンクされ、名刺を交換した出席者の画像と照合するデータファイルが作成されます。

  • 座席情報の取得
    ステップ103では、出席者が会議室の座席に着席すると、ユーザのノートPCの外向きのパンチルトズームカメラを介してパノラマショットを撮るなどして、各出席者がどこに座っているかを記録し、顔認識から識別された出席者と座っている人の名刺情報を照合します。出席者の着席場所、名刺情報、参加者の画像の関連付けが(データファイルなどを介して)行われます。

  • マップ作成
    ステップ104において、座席位置、出席者、出席者の名刺情報を示すマップが作成されます。マップは、名刺のスキャンから導出された出席者に関する情報(会社名、役職、経験、連絡先情報など)を示します。さらに詳細な情報は、別のウェブサイト(LinkedInなど)を検索して出席者の情報を調べるなどして表示できます。また、出席者の名前の発音を含み、マップは各参加者の名前を発音しやすくすることもできます。

  • ロケーションマップの生成
    ステップ105では、会議の各出席者についてステップ101〜104のそれぞれが繰り返され、会議のすべての出席者についてロケーションマップが生成されます。ロケーションマップの例はFig.2です。

このように、会議参加者の顔と名刺情報を接続する考えは、オンライン名刺交換でも共通して適用できると思います。一方で、ちょっとした質問で個人情報を出したくない場合には、ビジネスチャットでリアルタイムにQ&A対応するなど、ツールの使い分けも必要になってくるでしょう。




このコロナ禍による経済低迷期に、間違いなく新しいテクノロジーを活用したSales Techの導入が進むと思われます。Sales Techによって時間を効率的に活用することで、営業担当者は、ターゲット顧客に向けた魅力あるコンテンツ作りや、特定顧客のための提案準備などの、ビジネスの付加価値付けに割くことができるようになります。

特許情報には、最先端のテクノロジーを活用した新しい動きが表れています。ご関心のある方は、ネオテクノロジーまでお問い合わせください。