在宅勤務のコミュニケーション


新型コロナウィルス対策のため、ネオテクノロジーでも在宅勤務の日が増えました。実際に在宅勤務を行ってみると、会社と自宅との環境の違いに戸惑ったり、調整に手間取ったり、やりづらい点にぶつかります。今回紹介するのは、筆者が「在宅勤務だと、確かに困るよね」と共感した、“在宅勤務あるある”な発明です(特開2020-038559、キヤノン、特開2020-047141、日本電気)。


コミュニケーション、情報共有の課題

在宅勤務では、日々の業務やペンディング事項などの報告や記録は重要です。実際にオフィスで勤務している場合には、上司や同僚に声を掛け、その場で相談、確認、情報共有ができますが、在宅勤務の場合はそうはいきません。ここで紹介する発明は、在宅勤務やリモートワークを必ずしも前提としていませんが、発明の認識している課題が、在宅勤務における課題と共通することから取り上げています。ご了承下ください。


どれが成果物なのか?

この発明は、プロジェクト監視者のために、作業者の業務進捗状況を可視化して管理するためのプロジェクト管理ツールの発明です(特開2020-038559、キヤノン)。ここで課題にしているのは、「作業者は業務中に多くのドキュメントを編集して作業を行うが、業務管理者に全てのドキュメントが成果物として提示されると、業務管理者は多くのドキュメントの中から、成果物のドキュメントを一見して把握しにくい」というものです。つまり、どれが一番重要な成果物なのか?ということです。

作業者の編集したドキュメントに対して、成果物として報告する対象であるかを示す評価値を、下記式を用いて算出します(W1、W2、W3はそれぞれの結果値の重みを表す)。重みは、作業者の操作履歴情報やドキュメント内のキーワードの出現回数を入力値として機械学習によって決定してもよく、業務内容ごとやキーワードごとに重みを変えてもよい。


評価値=(A)+(B)+(C)

  • (A)W1×編集量参照結果
  • (B)W2×事前登録内容比較結果
  • (C)W3×業務内容比較結果

図3A~Cは報告書の一例を示します。
図3Aでは、設計図作成について、6つのドキュメントが報告対象のドキュメントになっていますが、評価値を算出した結果、図3Bのように報告対象の成果物は1つに特定されています。
また、図3Cのように、1つの成果物のアイコンが大きく強調表示され、成果物以外のアイコンは小さく表示されています。


重要な情報が漏れていないか?

状況が刻々と変化する中で、一日に接する情報量は大量になります。複数プロジェクトに関わっている場合、あるプロジェクトの業務に集中していると、他のプロジェクトの関連で受け取ったメール情報やファイル情報にキャッチアップできない場合もあります。特に、在宅勤務の場合は相手が見えないので、情報を送っただけで「分かっているだろう」と判断してしまうと、思わぬ見落としやトラブルの原因になります。


この発明は、サプライチェーン管理システムにおいて、災害等の異常事態発生時に大量の情報が送られてきた場合、事業責任者が、重要な情報が報告候補から漏れないようにするための工夫です(特開2020-047141、日本電気)。この発明も在宅勤務を対象としていませんが、在宅勤務と課題の認識の共通性があるため、取り上げています。ご了承ください。


この発明では、情報発信が行われた期間に着目し、三つ以上の分割期間に分けて重要情報の選定を行います。また、重要情報として選定された情報について、所定の内容を抜粋した抜粋情報を生成します。


  • 初動期間:最も時間的に早いもの
    ⇒異常の内容や発生状況が含まれているため、報告対象として必須と判断

  • 収束期間:最も時間的に遅いもの
    ⇒異常に対する対応が完了した旨を表す情報が含まれているため、報告対象に含めるべき情報が踏まれていると判断

  • 途中期間:初動期間でも収束期間でもない期間
    ⇒報告対象として必須でない場合も多いため、対象ワード等で絞り込んで使用することを判断

図5は、受領した情報を上記三つの期間に分割し、途中グループに属する抜粋情報の絞り込みを示しています。
図5aは分割前に情報が発生したもの、図5bは分割後のものです。
途中グループの抜粋情報は、報告に適したワードを予め設定しておくか、人工知能等により学習させることができます




一日単位で完結する業務を行っている人は少ないでしょう。
また、短期的な目標と長期的な目標の両方を見据えて、リアルタイムで変化する社内外の状況に応じて、柔軟に対応して行動しています。
多くの人が、在宅勤務を実際に行ってみて、在宅勤務のメリット・デメリット、在宅可能な業務・在宅に適していない業務を再認識しているのではないでしょうか。
コロナウィルスをきっかけに、想定していなかった“働き方改革”が進んでいますが、変化に伴う今までにない課題は、新しい創造の一歩にもつながります。