化学への情熱をかきたてよう!


新型コロナウィルスの影響で、多くの学校や大学が休校や閉鎖を余儀なくされています。こんなゲームだったら、子どもの自宅学習でやらせてもいいかな、と思うゲームの発明を見つけました。学生が戦略ゲームを通じて、化学と物理科学の概念を学ぶことができるSTEM教育を目的としたゲームに関する発明です(US20200051460、PLASMA GAMES)。



自発性、創造性、判断力、問題解決力を養うためのSTEM教育

STEMとは、

それぞれの頭文字を取った言葉で、科学・技術・工学・数学を総称した言葉です。STEM教育はこれら4つの学問の教育に力を注ぎ、IT社会とグローバル社会に適応した国際競争力を持った人材を生み出そうとする教育システムです。「先生が教えたことを、生徒が覚える」いままでの教育スタイルでは、人工知能(AI)を使いこなせる人材には育ちません。STEM教育の根底には「自分で学び、自分で理解する子ども」を育てるねらいがあります。新たな時代に必要とされる能力である、自発性、創造性、判断力、問題解決力を養うことが、STEM教育の本質的なねらいなのです。

この発明は、ゲームを通じてSTEMを学ぶためのものです。このゲームは、プレイヤーが制御するアバターが、科学的原理に基づくゲームメカニズムを使用して、科学的特性を持つ敵のアバターと対戦し、戦略的に勝ち残るサバイバルゲームです。ゲーム画面を見るように特許図面を見ながら、どのようなゲームなのかを見ていきましょう。



Fig.17はゲームのスタート画面のユーザーインターフェースです。二つのゲームモードが設定され、レベルを上げるための学習エリアとして実験室があります。



  • ストーリーモード(予め設定されたストーリーに基づく、練習用の第1モード)
  • シミュレーションモード(プレイヤーがカスタムで難易度を設定してレベルと能力をテストできる第2モード)
  • 実験室...ゲームレベル(学習レベル)を上げるために、科学的原理、歴史、その他のオブジェクトに関連する情報について学習するのが実験室です。

その他、成果(このゲームに関連する教育分野の科学者やエンジニアの実績など)、ノートブック(プレイヤーがゲーム中の記録をメモしたり、数式をコピーしたりするためのスペース、電卓機能など)、ユーザープロファイル(合計プレイ時間、完了レベル、達成された効率スコア、獲得されたエネルギーとリソース、敗北した敵、ロック解除された学習オブジェクトの割合、学習スタイル、キャリアへの関心などに関する情報)、教師モード(教師アカウントにより、クラス内生徒に課題を提出したり、生徒のパフォーマンスを追跡)ボタンが含まれます。



Fig.18はゲーム空間マップです。ゲーム空間マップ(760)は空間グリッド(762。5×7など)で構成され、各グリッドは科学的原理に基づき、独立して相互作用する特性とプロパティで構成されています。ゲーム空間マップは、川(764)や丘(766)などの環境要素、土の山や屋根(776)や樹木(778)等の地形要素、オイルドラム(780)、クレートやキャニスターなどの軽いカバー要素を含みます。これらの要素は、空間を占有し、視線を部分的に遮断し、特定の空間を通過不能・視線遮断しています。



ユーザーが制御する主人公であるプレイヤーキャラクター(768)、敵タイプ固有のAIに従って動作する敵キャラクター(770)は、ゲーム空間マップをナビゲートし、科学原理に基づくアクションおよびゲームメカニズムを使用して他のゲーム要素と相互作用します。



FIg.22左側912は、ゲーム機構でユーザーが制御する部分に相当するアクションパネルです。Fig.22のアクションタイトル(916)では、ユーザーは、攻撃的な行動、すなわち、原子のボーアモデルを具体化する電磁放射装置を選択したことを示しています。ユーザーは、アクションパネル(912)の値を選択、調整または入力することができます(918)。シミュレーショングラフィック(920)は、物質のモルの数など、ゲームメカニズムがどのように構成されるかを視覚的に提示します。



FIg.22右側914は、標的にされた敵アバターのゲーム要素(934)を示す反応パネルです。Fig22では、Grunt Zekが20キログラムのニッケルの鎧を身に着け、これによって、どんな反応をするかをシミュレートした効果(936)が示されています。Fig.22では、Grunt Zekの鎧は、電磁放射装置から放出される2.4メガジュールのエネルギーを吸収した結果、ニッケルの固体と液体の間の相変化点で温度が上昇し、鎧が溶け始めることを示しています。



関連する学習オブジェクトに関する補足情報も表示されます。反応パネルの下にある学習オブジェクトを説明する表示(938)、反射バブル(940)は、関連する学習オブジェクトに関する補足情報を提供します。これはゲームプレイ中に定期的に更新され、ユーザーに対して、時間の経過とともに少しづつ理解可能な量の新しい情報を表示させていきます。



Fig.25は、科学的知識と学習オブジェクトの主要なリポジトリである実験室です。実験室では、選択された元素(1010)を有する元素周期表(1008)が表示されています。ここではCarbon炭素原子が選択されています(グレー表示)。元素周期表は、ゲームにおける攻撃行動と防御行動の両方のバックボーンを構成しています。ユーザーは、プレイヤーのキャラクターを装備し、敵を克服するために、周期表の相互作用と周期表からの元素の選択を通じて、無機材料、物質、周期表について学びます。



アクションバー(1012)は、ゲームアイテムのアイコンを表示し、防御アイテム(盾)、電磁放射ガジェットなどの武器アイテム、電磁手榴弾(ライフル銃の照準器と手榴弾)のような二次兵器アイテム、スペシャルアクションアイテム(稲妻)、ブートに関連付けられた移動アクションアイテム(ブート)が表示されています。ここでは、防御アクションが選択されています(グレー表示)。アイテムステータスバー(1014)が隣に表示されています。


材料特性バー(1016)は、電磁特性、化学反応性、可燃性、放射能などの材料特性の主要なカテゴリに対するアイコンを有し、周期表からの元素の選択および材料特性バーからのカテゴリの選択に基づいて、関連する科学的知識とデータ、選択された要素の回転3Dモデルを表示します。


コンテンツウィンドウ(1020)は学習オブジェクトが表示され、ユーザーが学習できる場所です。ユーザーのゲーム進行経過や、学習スタイルや好みなどのユーザーの学習プロファイルに基づいて、学習オブジェクトを表示するように構成されています。





Fig.26はプレイヤーキャラクターの鎧の3D表現です。ユーザーがさまざまな元素と素材を選択して鎧を構成すると、3D表現が更新され、科学原理に基づいて、鎧がどのように見え、選択された元素がどのように見えるかを確認できます。この図ではユーザーは鎧の前部と外層にカーボンを選択しています。



鎧をアップグレードすることもできます。
鎧の防御力をアップさせるために、フィンを追加して熱伝達率を上げる、修理や交換が簡単で安価な材料を使用する、一部の化学プロセスと反応しない金や耐食性ポリマーなどの特定の材料で外装の外側をコーティングするなどもできます。
また、金属製の鎧を研磨して、光電閾値範囲を拡大し、吸収される電磁放射の割合を減らすこともできます。





Fig.27は、ユーザーが攻撃するための攻撃機構のインターフェース画面です。ここでは、酸化還元反応の力を利用して様々な攻撃を行うレドックス噴霧器が示されています。ガスキャニスター(1062)、ノズル(1064)で構成されています。



ガスキャニスターは、ユーザーがノズルに供給する反応物の量を制御できるように構成されています。
ここで、ユーザー、は酸化還元反応、化学量論およびエネルギー移動に関する知識が必要になります。
ノズルは、ユーザーがノズルの設計(噴霧ガスに引き込まれる酸素(1068)の量、噴霧パターン、反応強度)を制御することができます。
ここで、ユーザーは、機械設計、空力、および化学量論に関する知識が必要になります。





このゲームを通じて、プレイヤーは、科学に関する重要な用語を学び、重要な公式を理解するように動機付けられています。

プレイヤーは、このペースで学習を促進する魅力的な形式で、高度な意思決定(たとえば、鎧のアップグレードのトレードオフのバランスを取り、ゲーム内で戦略的なアクションを取る)等により、この知識を活用します。