新型コロナウィルスの猛威が止まりません。感染予防対策のために、多くの企業が在宅勤務や時差通勤を実施しています。当社でも、お客様や社内メンバーとの打合せで電話会議やビデオ会議を行う機会が増ました。皆が協力して賢明な行動を取るよう努力することによって、感染リスクを最小限に抑え、早期の収束につなげたいものです。今回取り上げるのは、感染症の感染拡大を防止するための一連の発明です(WO2019-239813、WO2020-003867、特開2020-027610、いずれもパナソニックIPマネジメント)。
コロナウィルス、インフルエンザなど多くの感染症は、接触感染、飛沫感染、空気感染などのさまざまな感染経路を介して人々の間で感染します。手洗いやうがい、マスク着用、不要不急の外出を控えるなどの対策はもちろんですが、ここでは、AIを用いて感染リスクを抑えるための3つの発明を紹介します。
この発明は、高齢者が暮らす介護施設において、施設の居住者が訪問者との会話により感染するリスクを推定する技術です。感染症は高齢者や持病のある人が重症化しやすいことが報告されています。また、感染者は咳やくしゃみをせずに呼吸すると感染性ウィルスを放出した可能性があります。
この発明のプロセスは下記です。
これによって、屋外の居住者と屋内の人との間の相互作用(会話)によって引き起こされる感染リスクを推定することができます。
対話時に人が互いに近くにいるということは、ある人が感染すると、接触感染または飛沫感染のリスクが高まることを示唆しているので、人と人との距離、相互作用の時間を計測することによって、リスクを推定します。
そして、施設スタッフ宛に、居住者と訪問者の状況が通知されるので、施設スタッフが感染リスクを適切に把握することができます(図6)。
この発明は、感染者の咳やくしゃみによる飛沫感染を適切に抑制するための技術です。例えば、インフルエンザの場合、飛沫感染または空中感染が主要な感染経路であると考えられています。特定のグループの中に感染者がいる場合、感染者の咳やくしゃみにさらされた人や、感染者の息に含まれるインフルエンザウイルスなどを吸入した人が感染する可能性があり、場合によってはアウトブレイクが発生する可能性があります。
この発明のプロセスは下記です。空間(室内など)に存在する人の位置に応じて咳やくしゃみを検出し、気流を発生させることにより、飛沫感染を抑制するためのシステムです。
これによって、感染者の居場所がわからなくても、分離された領域ごとに局所的な気流が生成されるので、飛沫感染を抑制することができます。咳やくしゃみによる他の人への感染を抑えることができます。人が集まる空間内に、気流によるバリアを生じさせるようなイメージです(図8)。
インフルエンザ等の感染症が流行すると、医療機関から地域ごとの感染者数を示すデータが公表されるので、地域ごとの感染症の流行の度合いを認識することができます。
しかし、このデータは発表時点から1週間程度過去の患者数を示すケースが多いので、タイムリーさに欠けるという問題があり、データを確認してから感染症の対策を行っても、手遅れになる可能性があります。
そこで、感染症が流行する又は流行の予兆が表れた場合、各地域における感染症の感染リスクを正確かつタイムリーに特定し、地域ごとの感染症の流行の度合いをタイムリーに知らせることが要望されています(図12)。
この発明のプロセスは下記です。地域ごとの感染症に感染する感染リスクを正かつタイムリーに特定し、感染症の拡大を防止するために適切な情報を提供します。
これによって、地域ごとの感染注意レベルに応じて適切な情報を使用者に提供することができ、使用者が過剰な感染症対策を行う、あるいは、使用者の感染症対策が不十分になるといった事態を回避することができます(図27)。