ファン体験を向上させるパーソナライゼーション


今月の注目発明は人間のモチベーションを高める発明に着目しました。サービスを提供する企業の従業員、企業からサービスの提供を受ける顧客、それぞれのモチベーションを高める発明です。国内特許では従業員のモチベーションを高める発明(WO2019-235333、株式会社Be&Do)、米国特許では顧客のモチベーションを高める発明(US2020/0034878、FanThreeSixty)を紹介します。



ファンとの「感情的なつながり」を活性化する

US2020/0034878は、スポーツなどのライブ視聴者がいるイベント会場において、ファン体験を向上させる方法です。ファンは、各ファンに関連付けられた収集データに基づいてオーディエンスグループに分類されます。ファンとの相互作用は、活性化基準(ファンによって行われた行動やファンによる購入、イベント情報、周囲条件など)を活性化イベントにマッピングします。活性化イベントは、ファンに関する追加データを収集したり、ファンにインセンティブを与えて購入を促したり、他の方法でファンエクスペリエンスを向上させたりできます。

ファンのプロファイルを設定する

全体フローを示すのがFig.2です。

ファン体験を向上させるために、ファンに関する情報を収集することが重要です。

このシステムでは、属性の階層化とともに属性のリストをファンに関連付けることができます。

一部の属性は既知であり、一部は未知であり、未知の属性を取得するための特定のコンテキストも関連付ける場合があります。

これは、未知の属性を、未知の属性を取得するのに成功した方法に関連付けることにより、未知の属性をファンから取得するためです。

属性は、結果の価値が高いと判断された属性が最高にランク付けされるように、階層的な方法でランク付けされます。


ファンの知識スコアを計算する

知識スコアは、既知の属性と未知の属性に基づいて計算されます。たとえば、20個の属性を設定していて、ファンは20の属性のうち10の属性に関する情報を提供した場合に、この場合は、10個の既知の属性と10個の未知の属性があるため、50%の知識スコアが得られることになります。

知識スコアを使用して、収集する必要があるファン情報またはファンの属性を決定します。例えば、4つの属性として、収入、年齢、性別、お気に入りのプレイヤーが設定された場合、4つの属性値の合計が100になるように属性に重みを付けします。重み付けは、収入が30、年齢が25、性別が25、お気に入りのプレイヤーが20になるように設定されます。収入は最も価値の高い未知の属性なので、このシステムは、収入に関連する情報をより積極的に取得しようとします。



外部サイトとの連動、属性の優先順位リストの作成

例えば、ファンがシーズンチケットを低価格の座席から高価格の座席にアップグレードした場合、このアクションがファンの収入の増加を示す可能性が高いと判断される場合があります。収入属性は休止状態からライブになり、収入属性に高い優先度が与えられる場合があります。

さらに、優先順位リストは、ユーザーが所有する外部サイトへの変更に基づいて変更することができます。外部サイトとは、SNSや外部WEBサイト等のユーザーに関連付けられた外部ソースからのものです。これにより、このシステムには登録されていないユーザープロファイル情報を使用して、優先順位リストを更新し、ユーザーにユニークな体験を提供します。例えば、ユーザーは、自分の子供をリトルサッカーチームにサインアップさせると、ユーザーの新しいアカウントがこのシステムに通知されます。そして、ユーザーのプロファイルが更新され、優先リストが更新されます。この優先リストに基づいて、ユーザーにアリーナでの青少年感謝の会の通知を送信し、リトルリーグの子供を無料で招待します。



ファンのリアルタイム情報を用いる

ファンのスポーツ観戦中のリアルタイム情報を用いることもできます。

ファンが興奮してガッツポーズを上げと、モバイルデバイスが持ち上げられたことを感知します。

ファンのモバイルデバイスの動きによってファンが興奮していることを感知し、ファンが次のゲームのチケットを持っていないことを認識すると、興奮がなくなる前に、ファンに次のゲームの割引チケットのオファーを提供します。

オファーは、限られた時間内に期限切れになるように設定されてもよいし、ファンはチケットの割引を受けるために優先属性の情報を提供してもよいです。

これらのファンとの相互作用は、関連付けに基づく機械学習を介して決定されます。

例えば、ファンの行動の観察に基づいて、特定のプレイヤーのファンが主要なプレーをする場合、そのプレイヤーのファンは商品を購入する可能性が高いと判断されます。

この傾向を強化するために、「プレイヤーXのファン」のオーディエンスグループ、「プレイヤーXがゴールを決める」の活性化基準、および「プレイヤーXの商品の20%割引を提供する」という活性化イベントとを追加できます(Fig.3)。



ファンとプレイヤーとの「心の距離」を縮める

エンターテイメントにおけるファンとプレイヤーの関係は変化してきています。以前は、スター選手は憧れの存在でした。現在では、身近に応援できる存在のエンターテイメントが主流になりつつあります。誰もがコンテンツを投稿・視聴できる動画共有サイト、ユーチューブは、動画ネイティブ世代にとって、日常的にエンタメを楽しむ場となっています。ファンは毎日のようにスマホでお気に入りのプレイヤーを見つめ、友達のように感じています。ユーチューブはファンとエンタメのプレイヤーとの「心の距離」を縮めることに成功しました。このことは、エンターテイメントの世界だけでなく、様々なサービス業において参考になるのではないでしょうか。ファンとの「心の距離」を縮め、いかにファンの心をつかむことが重要かを示しています。