過程中心の認知・行動要素の分析と、パーソナライズ化した学習計画


教育分野では、オンライン公開授業MOOC(Massive Open Online Courses)が活発になるにつれて、コンピュータ-基盤教育をパーソナライズ化するためのデータ分析の使用が普及し始めています。この発明は、学習者に関する認知および行動分析に着目し、パーソナライズ化した学習計画を提供する発明を取り上げます(特開2019-197209、アノト コリア コーポレーション)。



結果中心の学力診断の限界

一般的な学力テストでは、学習者が学力を診断するために提供された問題を解き、教育者は学習者の答えを採点して、その成績を通じて学習者の学力を診断します。学習者の答えが正答であるか、誤答であるかどうかにのみ焦点を置いているため、学力診断においては結果中心の成績評価が行われています。

このような学力診断では、単純に学習者の成績結果のみを得るだけであり、学習者を多様な基準で評価することができません。そのため、学習者への学習指導では、単純に間違えた問題と類似した問題を提供する程度になります。また、正答した学習者が“どんな過程で、正しい答えにたどり着いているのか”、答えが分からない学習者が“どのような認知・行動パターンを取っているのか”掘り下げられていません。



過程中心の認知・行動要素の分析

この発明は、学習者の学力に影響を与える認知・行動要素を誘導し、パーソナライズ化した学習計画を出力することができる推薦エンジンを通じて、学習者がより高い試験結果を達成するように助けるシステムの発明です(図2)。

学習者の学力に影響を与える認知・行動要素の診断には、認知および行動診断(CBD:Cognitive & Behavioral Diagnostic)を用います。学習者が問題を読んだ時間に対する判断、問題を解釈する行動に対する判断などを分析します。例えば、自信(Confidence)は、問題を解くのに長時間かかった場合はたくさん悩んだと考えられ、短時間であれば悩んだ回数が少ないと考えられます。また、問題の項目別の解答速度の差も考慮されます。

  • 自信(Confidence)
  • 根気(Grit)
  • 推論力(Reasoning)
  • 暗記力(Concept memory)
  • 深層理解力(Deep understanding)
  • 計算能力(Calculation Ability)
  • 問題理解力(Ability to understand question)
  • 試験戦略(Test-taking Strategy)



学習者の認知・行動要素データの入力

近年では、スマートフォンやタブレットPCなどのスマート機器の増加に伴い、スマート機器への入力手段としてスマートペンの活用も増えてきています。教育の場においても、スマートペンを活用した学習環境が造成されています。例えば、アノト社のスマートペンは、ドットパターンのようなパターン認識に基づいて、学習者が筆記した内容をデジタルデータ化することも可能です。

学習者の認知・行動要素データの情報を取得するには、スマートペンのような入力機器を用います。上記のテスト遂行の行動と関連した認知・行動要素(CBD要素)と、スマートペンのようなデータ入力装置を使用して収集された各学習者の特定データ間のデータ基盤、およびアルゴリズム方式で計算された関係を用います。下表はCBD要素と行動メトリックの関係を表したものです(表1)。「Stroke」は、学習者がスマートペンを用いて入力した複数のストロークを意味し、ストロークを形成する点の座標値、点が入力された時間の情報および点の筆圧などが識別されます(図5)。

カスタマイズ型学習モジュール(37)は、i)問題間の類似度およびii)学生間の類似度を決定するために、類似度関数、例えば、コサイン類似度(cosine similarity)を適用することができます。問題間の類似度および学習者間の類似度が計算された際に、類似度が最も小さな部分、すなわち、CBD要素に最も大きな差が生じる部分を優先的に考慮して、問題が薦められます。つまり、根気が足りないと(学習者のレベルにおいて)判断された学習者には、根気と関連した(問題の項目のレベルにおいて)問題の項目が薦められ得、根気が足りない他の学習者がきちんと解けなかった問題の項目が薦められます。さらに、学習者に対する繰り返しの分析および判断を通じて機械学習を遂行することによって、学習者に最も適した問題を薦めることにより、学習者パーソナライズ型学習計画を提供することが可能になります(図9)。