試食イベントでユーザの主観的な好みを収集する


ゲーミフィケーションを使用してユーザから主観的な好みを収集するシステムの発明です(US2019/0299098、個人)。食品とAIの関わりについては、今月の国内特許の注目発明でも取り上げていますが、それとは異なるアプローチとして取り上げたいと思います。



ゲーミフィケーションとは

ゲーミフィケーションとは「ゲーム化」という意味で、ゲームそのものではなく、ゲームのメカニズムを、ゲームではない別の分野に応用する取り組みのことです。遊びや競争など人を楽しませるゲーム独特の仕組みを用いることで、ユーザを惹き付け、ユーザの行動を活性化させたり、適切な行動に気付かせたりするために使われます。ビジネスにおいては、購入金額に応じたポイント付与やレベル別の優待など、ユーザのロイヤリティ向上、ブランディングなどが期待できます。



試食イベントのリアルタイムフィードバック

食品や飲料の試食・試飲イベントは世界中で人気を博しています。これらのイベントは、公園などの公共スペースで開催されることもあれば、レストラン、ワインバー、さらには自宅などのプライベートスペースで開催されることもあります。これらのイベントでは、参加者はさまざまな種類の食品や飲料を味わうことができます。参加者は一部の食品を好きかもしれませんが、他の食品は好きではないかもしれません。個々のテイスティングの好みは、食品提供者に有益なフィードバックを提供します。しかし、個々のテイスティングの好みは、正確かつリアルタイムで記録されていませんでした。

この発明は、ゲーミフィケーションを使用することにより、試食や試飲イベントにおいて、ユーザから主観的な好みを正確にリアルタイムに収集する工夫をしています。

Fig.6は全体の仕組みです。



ワインテイスティングイベントの例

具体的な例として、ブラインドテイスティングコンテストが挙げられています。これは、ワインの産地や銘柄を隠した複数のワインを試飲し、その産地・銘柄を当てるというものです。例えば、4つの異なるワイナリーからの4つのワインがあります(Fig.7)。

参加者は4つのワインを試飲して、どのワインがどの銘柄かを推測し、端末に入力します。さらに、参加者は各ワインを評価して、9段階のランクを付けることもできます(Excellent、Very very good、Very good、Good、OK、Fair、Tolerable、Poor、Yech)。オンラインプラットフォームでは、各ワインのグループ平均投票スコアを決定し、参加者の投票スコアと各ワインのグループ平均投票スコアとの間の偏差を計算します。グループ平均からの全体的な偏差が最小のユーザが勝者として選択されます。



そもそも、人間が何を美味しいと思うかは、その人の感覚や好みによって異なり、絶対的な評価はありません。いままでは、熟練者が評価を行う「官能評価」と呼ばれる手法が飲食品の風味の評価に用いられてきました。

このような食品ならではの評価の難しさに対して、どのようにAI活用ができるか、日米の注目発明は、今後を考える上で大事な示唆を与えてくれています。