空き家の利用を促進する


近年、少子高齢化や地方における人口減少などの理由により、空き家数の増加が社会問題となっています。この発明は、建物のエネルギー使用量に基づいて在室状況の判定を行い、空き家の種別や属性に基づいて空き家の利用方法を提案することによって、空き家の利用を促進するための発明です(特開2019-159467、東京瓦斯)。



核家族化の進展と空き家の増加

核家族化の進展によって、親と子が別々に家を持つことが当たり前になってきました。親が亡くなる頃には、子はすでに自分の家を持っているケースが多く、親の家を相続しても住むわけではなく、かといって思い入れがあるのですぐには解体でず、解体するにも費用が掛かるなどの問題が生じています。これらのことから空き家が増加しています。

空き家とは、居住その他の使用がなされていないことが常態である建築物のことを指します(空家等対策特別措置法2条)。具体的には、1年間を通して人の出入りの有無や、水道・電気・ガスの使用状況などから総合的に見て「空き家」かどうかが判断されます。

たとえ空き家であっても、所有者の許可なしに敷地内に立ち入ることは不法侵入に相当します。平成26年11月に成立した「空家等対策の推進に関する特別措置法」(通称:空家等対策特別措置法)によって、管理不全な空き家の場合、自治体による敷地内への立ち入り調査が認められ、所有者の確認をするために住民票や戸籍、固定資産税台帳(税金の支払い義務者の名簿)の個人情報の利用、水道や電気の使用状況のインフラ情報の請求ができるなど、所有者の情報を取得しやすくなりました。



空き家を利用する新たな事業

空き家が問題になっている一方で、空き家を利用した新たな事業サービスが生まれています。例えば、空室を利用する事業として、空き家を宿泊施設として利用する民泊事業や、太陽光パネルを家屋に設置し利用する事業、空き家をEVスタンドとして利用する事業などが始まっています。

空き家を利用した事業を行うためには、空き家を利用したい事業者と、空き家を提供したい所有者の両者のマッチングが必要です。しかし、事業者は登記簿の調査や建物の所有者からの申告を利用して事業に利用可能な空き家を探している状況であり、そのため、空き家を探すために多くの手間が掛かる上、発見できない空き家も多くありました。また、事業者により発見されない空き家の所有者は、事業者からの情報を得られないため、自身が所有する空き家をどのように利用すればよいかわかりませんでした。



空き室の所有者と事業者マッチング

この発明は、空き家の利用を促進するための発明です。空き家判定システムのユーザは、建物の所有者、空き家を利用する事業の事業者、行政機関を含みます。下記3つのステップで空き室の利用を促進します。

エネルギー使用量に基づいて、在室状況を判定する

まず、建物におけるエネルギー使用量(電力、ガス、水道)に基づいて在室状況を判定します(図1)。在室状況の判定は、対象日の総エネルギー使用量E1と、予め設定された総エネルギー使用量E1の閾値Eth1(≧0)とを比較することにより判定します。図5の例では、建物B001、B002の総エネルギー使用量E1は閾値Eth1以上であり、建物B003の総エネルギー使用量E1は閾値Eth1未満なので、建物B001とB002は対象日に在室であり、建物B003は対象日に不在と判定します。

建物が不在の場合であっても、待機電力エネルギーが使用されることが考えられるため、予め設定された機関のエネルギー総使用量E2と閾値Eth2を比較することによって、待機電力などによる誤判定を抑制することができます。対象期間の各期間のエネルギー使用量の一例を示すのが図6です。また、対象日のエネルギー使用量のパターンに基づいて、在室状況を判定することもできます。不在パターンとして、一部の期間だけエネルギー使用量E2が閾値Eth2以上、それ以外の期間はEth2未満になる場合が考えられます。



在室状況に基づいて、空き室種別を判定する

建物の在室状況の判定に基づいて、建物が空き家か銅貨、空き家の場合は空き家の種別を判定します。空き家種別は、短期空き家、中期空き家、長期空き家、周期空き家があり、周期空き家には、午前空き家や午後空き家などの時間帯空き家、毎週所定の曜日に空き家になる曜日空き家、毎月所定の週に空き家になる週空き家、毎年所定の月に空き家になる月空き家、毎年所定の季節(例えば、夏)に空き家になる季節空き家などが考えられます(図8)。 空き家種別と同時に、建物情報と居住者情報が記憶されます。建物情報は、建物種別、間取り、駐車場の有無、住所、築年数、土地面積、建物面積、躯体構造などを含み、居住者情報は、居住人数、年齢、性別を含みます。



空き家種別や建物属性に基づいて、空き家の利用方法を提案する

空き室判定に基づいて、各種メッセージが設定されます。メッセージは、所有者へのメッセージ、事業者へのメッセージ、行政機関へのメッセージがあります。所有者へのメッセージは、空き家種別に応じて、適切な用途の提案がなされます(図13)。例えば、短期空き家には民泊としての利用は難しいが、太陽光パネルの設置場所としては利用できます。一方で、長期空き家は、太陽光パネルの設置場所としも利用できますが、民泊として利用する方が高い収益性が期待できます。また、建物の属性情報によっても用途が異なると考えられます。例えば、駐車場を有する空き家は、貸し駐車場やEVステーションとして利用できます。また、都心部にある部屋数が多い戸建ては、民泊よりもシェアハウスとして利用する方が安定した収益性を期待できます。



社会問題となっている空き家ですが、これを資源として考えれば、潜在的な資源量は膨大なものになります。データの利活用、シェアリングビジネスなどによって、空き家を有効活用することで、社会課題を解決する新たなビジネス創出につながるのではないでしょうか。