センサデータを用いて廃棄物リサイクル効率を高める


現代の私たちの暮らしは、家に居ながらにして宅配の食事サービスを注文したり、オンラインショッピングができたりと、便利で豊かになりました。その一方で、プラスチック容器や包装など使い捨てを前提とした生活やビジネスが当たり前になり、地球環境の汚染や貧困層と富裕層の格差など、消費社会の負の側面も浮かび上がってきています。この発明は、廃棄物の画像などのセンサデータから内容物のパラメータを測定し、リサイクル効率を向上させようとする発明です(US20190197498、Compology)。



SDGs(持続可能な開発目標)

2015年9月、国連は「持続可能な開発サミット」において、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)を採択しました。持続可能な社会を実現するための17の目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/about_sdgs_summary.pdf



最先端テクノロジーでSDGsを実現する

AIやドローン、VR/AR、ブロックチェーンなどの最先端テクノロジーは、これらのSDGs目標に対して新しい可能性を示唆しています。企業活動が持続可能性の脅威を深刻化させているのは確かですが、企業だからこそ、脅威に対する解決策を提示することも可能なはずです。その一例が、今回取り上げるAIを用いた廃棄物のリサイクル管理です。



センサで内容物を検知する

Fig.1に示すように、廃棄物コンテナ100は各種センサを用いて内容物に関する情報を収集します。測定処理モジュールは、含有量センサや補助センサによって記録された測定値を処理して含有量パラメータを抽出します。例えば、含有量パラメータを使用して、廃棄物材料の純度または組成、価値、ブランド内包、量、または他の任意の適切な含有量の特徴付けを決定し、固形物(ゴミ、堆肥など)、液体(食用油、モーターオイルなど)、ガス、産業廃棄物、製造廃棄物など、各廃棄物コンテナの内容物(廃棄物)を分類します。物体認識においては、画像を用いた機械学習によるパターン認識で内容物を測定したり(Fig.12)、包装材料に記載されているブランド名を認識する(Fig.13)ことで、廃棄物の純度指数を計算したりします。



内容物の特徴・パラメータに応じて、廃棄物車両のルート指定を行う

その後、内容物の特徴・パラメータを使用して、収集された廃棄物をリサイクル施設に配達するように経路を割り当てます(Fig.10)。ルーティングは、廃棄物の量、価値、走行距離、その他の適切なパラメータに基づいて収集ルートを最適化し、貴重な廃棄物の含有量を施設の顧客に正確に提示します。また、受入施設(例えば、リサイクル施設、堆肥化施設、埋立地など)での分別効率の向上、廃棄物の回収、受け取りおよび処理に対する金銭的費用の正確性の向上、回収の金銭的価値の向上に役立ちます。内容物の特徴に基づいてごみ収集車のルートを指定することは、ごみ収集者への金銭的利益を最大にし、コストを最小にするだけでなく、受入施設の効率を高め、廃棄物の適切な処理とリサイクルを行うために機能するのです。




社会の変化に伴って課題も変化します。19世紀後半の近代社会では、人間は行動領域を広げるために、馬車の代わりに蒸気機関や自動車を生み出しました。現代社会では、安全安心のために、自動車自らが自動車を操作する自動運転が実現化されようとしています。何かの課題に対して、人間は知恵を使って解決策を生みだし、それをビジネスにつなげてきたと言えるでしょう。これからは、課題を単なる不具合や問題として捉えるのではなく、あるべき望ましい姿(SDGsもその一つ)として捉え、そこから何が必要かを考える“バックキャスティング”思考が重要になると思われます。その思考を実現するために、私たちはAIを始めとした最先端テクノロジーを、今までに無い斬新な切り口として活用できるはずです。