ダイナミックなルートと柔軟なスケジュールの大量輸送


より高速でより効率的な輸送サービスを提供するために、コンピュータおよび通信デバイスを使用する大量輸送システムに関する発明です(US20190108468A1、個人)。



ライドシェアとは

ライドシェアサービスとは、ライド(乗ること)をシェア(共有)するサービスのことです。移動したい人と車を持っている人をマッチングさせ、車による移動をシェアします。ライドシェアサービスを提供する企業といえば、米Uber TechnologiesやLyft、インドネシアのGO-JEKが有名です。ライドシェアサービスは、コンピュータや通信装置を利用することで、より柔軟で個別化された輸送サービスを実現しています。しかし、これらのライドシェアは、少数の乗客の輸送向けであり、多数の乗客の大量輸送には適していません。従来の大量輸送システムは、所定の経路を走行・停車し、厳密な運行スケジュールで動いています。



配車型ライドシェアと相乗り型ライドシェア

ライドシェアサービスには、2つのタイプがあることをご存じでしょうか?
一つは配車型のライドシェアです。近くを走っている一般個人の車が、自分を迎えに来てくれます。UberやLyftはこのタイプであり、近年注目を集めています。もう一つは相乗り型のライドシェアです。ある場所に移動する目的を持つドライバが、同じ方向に移動したい人を相乗りさせるサービスです。相乗り型ライドシェアはヒッチハイクと同じ考え方であり、タクシーとは異なり、コストは乗車した人同士で割り勘します。



ダイナミックなルートと柔軟なスケジュールの大量輸送

この発明は、静的ではなく動的ルート運行、固定停車地・固定スケジュールではなく柔軟な停車など、互いに協調して高速で便利で効率的な新しいトランジットサービスを提案しています。相乗り型ライドシェアと共通している考え方があります。

この発明のポイントは下記です。



輸送エリアのゾーン分け

具体的には、トランジットエリア(輸送エリア)を複数のゾーンに分け、固定トランジットセンターと、動的トランジットストップに機能を分けることで実現させようとしています。各ゾーンのサイズと境界は、最適化アルゴリズムに従って、交通需要と交通状況に合わせて変更できます(Fig.1)。

各トランジットゾーンは、ゾーン間を輸送するための転送ポイントとして機能する複数の転送センターが関連付けられています。トランジットゾーンは、最も近いトランスファーセンターに関連付けられていますが、トランジットゾーンを複数のトランスファーセンターに関連付けるために最適化基準を使用することができます。Fig.1では、4つのトランジットセンター(T1~T4)を有する輸送エリアの例を示し、それぞれが4つのゾーンに関連付けられています。

トランジット車両には2つのタイプがあります。トランジットゾーン内およびトランジットゾーンとそのトランスファーセンター間で乗客を運ぶローカル輸送車両と、トランスファーセンター間で乗客を運ぶトランジット車両です。ローカル輸送車両は、個々の乗客が乗降できる自動車およびシャトルのような小型車両であり、トランジット車両は、より大きな群の乗客を運ぶことができるバスまたは電車のような大型車両を用います。ローカル輸送車両は、ゾーンでの輸送需要に応じて車両をあるフリートから別のフリートに再割り当てできるため、ローカル輸送フリートへの車両の割り当ては動的になります。

Fig.2は、ゾーン1にあるA地点から、ゾーン16にあるB地点へ移動する場合の例です。この場合は、3回の輸送が行われます。最初の輸送では、ローカル輸送車両は、ゾーン1内のA地点で乗客をピックアップし、ゾーン1に関連づけられているトランスファーセンターT1に輸送します。2番目の輸送では、トランジット車両がトランスファーセンターT1からトランスファーセンターT4に輸送します。3回目の輸送では、ゾーン16のローカル輸送車両が、乗客をトランスファーセンターT4からゾーン16内の目的地Bまで輸送します。




この発明は相乗り型ライドシェアの大量輸送版ともいえそうです。また、エリアをゾーン分けして、固定機能と動的・柔軟な機能の二つの機能を持たせることによって、最適性・柔軟性を実現させようとする考え方は参考になります。