紙媒体DMのメリットを生かしつつ、構造化して付加価値を高める


ダイレクトメール(DM)に印刷される各種テキストや画像に関する情報を構造化されたデータとして記録する発明(特開2019-067244)を取り上げます。



商品やサービスの広告メディア(媒体)は、以前から紙媒体が用いられていました。近年の情報通信技術の発達により、電子メールやWEBを利用したターゲティング広告などの電子広告も増えています。また、「Shufoo!(シュフー)」などの電子チラシサービスが台頭し、紙媒体のデジタル化も進みつつあります。媒体の優劣を競うというよりも、多様化した媒体を組み合わせて(メディアミックス)、どのような属性の人に、どのような内容を伝えるか、を考えることの方が重要になるでしょう。年齢、性別、趣味嗜好、職業、居住エリアなど、対象者のさまざまな属性によって、WEB媒体の方が効果的な場合もあれば、紙媒体の方が効果的な場合もあります。



紙媒体広告の特徴と進化

一般的に、紙媒体の広告は一覧性が良く、使用する紙やデザインで特別感を演出することができるため、高級不動産や老人ホーム、高齢者向け通販などの新規顧客獲得にはメリットがあると言われています。また最近では、デジタル印刷機を用いたバリアブル印刷技術の発達により、オフセット印刷を前提とした画一的な内容のDMに代わって、顧客ごとに案内する内容を異ならせたパーソナライズドDMが可能になってきました。このようなパーソナライズドDMを用いることにより、電子メール広告やWEB広告と同様に、顧客の属性や趣味・嗜好、あるいは、過去の購買履歴を反映させたDMをタイムリーに発送することができるようになり、その結果として、売上アップが期待できます。



紙媒体パーソナライズドDMの課題

DMを用いた販促活動を効果的に行うためには、個々のDM内容と成果(商品購入や入会申込等)との相関を分析し、内容の改善を続けていくことが不可欠です。従来は営業担当者の経験則に基づいてDM発行が行われており、効果についての深い検証までは踏み込めていませんでした。また、紙媒体のDMがパーソナライズドDMになると、今までの画一内容のDMとは異なり、顧客ごとに異なる内容のDMが発行されることになるので、特定の顧客から問い合わせや苦情があった場合、コールセンターのオペレータが適切に対応できないという問題が生じます。



紙媒体DM内容を構造化データにする

この発明はDM構成情報管理システムです。DMの構成要素である小組フレーム単位でログデータが生成され、画像が配置される場合には画像の意味内容を記述した説明文が追加される仕組みを備えているため、DM発行後にログデータをコンピュータで解析することで、各構成要素とDMの成果との相関関係を導くことが可能になります(図1)。



図2はDMトランザクションデータ38の例です。顧客番号、郵便番号、住所1、住所2、新名、性別、生年月日等の個人情報のほか、DM企画に関わる制御情報が格納されています。例えば、顧客番号「000001」の宛名「大阪太郎」さんには、企画コード「B」の「加齢にお悩み」が適用され、メイン商品として「DHA&EPA」を推奨するDMが送付されることが規定されています。また、サブ商品1として「青汁スイーツ」、サブ商品2として「コラーゲン」が推奨されることや、今だけのプレゼントとして「1000円クーポン券」が贈呈されることが規定されています。このようにして出来たDMが図5です。



これによって、営業担当者は、顧客の属性に合わせたDM発送を行い、その結果をシステムに紐づけることで、顧客別のDM内容とその成果の深い検証を行うことができるようになります。また、DM発送後に顧客からクレームや問い合わせがあった場合、コールセンターのオペレータはその顧客の顧客番号に紐づいたログデータの検索を行い、その顧客に送付されたDMの内容を把握することができます。また、ログデータ中に各画像の説明文(意味定義)が付加されているため、適切な対応を行うことができます。




このように、紙媒体DMの内容を構造化することによって、電子媒体DMと同じようにログデータを取ることができます。紙媒体のメリットを活用しつつ、デジタル情報として付加価値を高める例として参考になります。これも一種のメディアミックスといえるのではないでしょうか。ほかにも紙媒体が有効な例に名刺があります。名刺は現在でも紙媒体が主流ですが、名刺情報共有システムによって、営業情報の有効活用ができるようになりました。