ゲーミフィケーション要素を取り入れた、債務支払い支援


この発明は、ゲーミフィケーション要素を取り入れた、個人の債務支払いを積極的に支援するインターフェスに関する発明です(US2019/0043034A1、Credit Clear International Pty Ltd)。
ゲーミフィケーションとは、「ゲームに使われている構造を、ゲームとは別の分野で応用すること」です。ゲーミフィケーションの概念自体は新しいものではなく、ゲームの要素や仕組みを活かすということは以前から用いられています。例えば、会員制のサービスにある「ポイント制」や「レベル別の特典」などはゲーム的要素といえます。この発明では、債務支払いを支援するためにゲーミフィケーションを用いていますが、具体的にはどのようなことなのでしょうか?



債権回収は負担が大きい

銀行やノンバンクなどの金融機関からの借り入れ、クレジットカードの支払い、インターネットプロバイダや電気通信などの支払いなど、請求書発行または支払いの回収業務は、現在、アウトソーシングによって行われています。借金を回収するために、金融機関や事業者などの債権者は、第三者である回収機関に対して、債権金額全体の約40%を支払っているといわれています。例えば、2014年には、オーストラリアの債権回収機関は約22億ドルの債務を回収し、貸し手である金融機関や事業者などの債権機関は、債権を回収するために0.88億ドルの費用が掛かったといわれています。

これとは対照的に、デジタルアプローチによる債権回収は成長を続けています。中小融資が過去20年間にわたって増加していることからも、いくつかのプロバイダは、借り手の消費者および企業とのコミュニケーションの効率を高めることで、借金の回収を改善するためのデジタルサービスに関心を持っています。

債権回収プロセスは、顧客満足になるとは見なされていません。借金にまつわる感情やさまざまな理由から、借り手は、貸し手やその代理人と話をしたがらないことが多いです。このため、消費者や企業に情報を提供し、誤解を減らし、かつ、債権収集部門や外部機関による強制回収に資するような、従来を代替するビジネスモデルやソリューションが必要です。



“ディスカウント”というゲーミフィケーション

債務者のパソコンまたはスマートフォンにショートメールメッセージが届き、借入金額と返済プランが表示されます(Fig.1B、1C)。その際に、限定時間内に支払うとディスカウントするというオファーも提示されます。ディスカウントの提示は、債務者との自動ネゴシエーションプロセスを含んでいます。ここに、“ディスカウント”というゲーミフィケーション要素が含まれています。



個人個人に合わせて、コミュニケーション方法を変える

このシステムには、借り手の行動データを収集することができ、このデータを用いて分析を行い、債権回収のための最も効率的かつ効果的なコミュニケーションを特定します。そして、借り手の行動データを学習します。さらに、借り手のリスクプロファイルを特定するために、アルゴリズム学習を使用することもできます。

借り手は意図しない借金によって困難に陥ることが多く、その多くは単純な見落としです。この発明は、借り手が借金を追跡するための単純で直接的な方法を提供することによって、時間を節約し、対立が少なく、使いやすい自己管理ポータルに焦点を当てます。これにより、借り手の満足度が上がり、債権回収の成功確率が高まります。この発明のもう一つの重要なメリットは、自動化された方法やシステムは、借り手と取引する際に、バイアスがかからないところです。



債権回収という行為は、借金取り立てなどのネガティブなイメージを連想させます。このような心理的に負担が重い行為を、デジタルアプローチによって自動化し、さらに、ゲーミフィケーション要素を取り入れることで、債権を回収する側の心理的負担を軽減させ、借り手側も借金を返済しやすくする工夫をしているいるのはユニークな着眼点ではないでしょうか。