製品の劣化予測と保証サービスの組合せ


近年、情報企業が繰り広げている情報プラットフォームビジネスは、“モノから情報へ”の動きを加速化させています。しかし、私たちの生活の中で、製品製造が全く無くなることはあり得ません。製造企業にとっては、製品(モノ)を販売するだけではなく、自社の持っている製品(モノ)に付帯する独自データ(情報)を活用することで、新たな付加価値の提供によるソリューションビジネスを展開できるチャンスでもあります。今回の注目発明では、製品情報と保証サービスを組合せた発明を取り上げます(特開2018-136124、JFEスチール)。



熟練者の不足、さまざまな劣化要因

耐候性鋼の劣化診断では、従来は、熟練の点検者がさびの外観評点を行っていました。しかし、時代とともに、熟練の点検者が少なくなってきていること、また、耐候性鋼が普及していない国や地域においては、目視で評価できる点検者は稀であることなど、課題があります。そこで、調査対象物(耐候性鋼)の表面画像を画像処理して腐食状態(外観評点)を識別する方法が用いられています。しかし、表面状態のみを識別の対象としているため、腐食に至った背景を分析することができません。腐食状態に至るまでは、腐食環境に応じた様々なパターンの履歴があるからです。


劣化の原因となる要因データベース

この発明は、耐候性鋼データベースに、これまでに腐食画像が得られている耐候性鋼ごとの、腐食画像、外観評点、付随条件(材質、暴露期間)、腐食環境(期間平均飛来塩分量)を収録し、保証対象とする耐候性鋼の劣化診断を行う際には、耐候性鋼データベースから、保証対象とする耐候性鋼の腐食画像に類似した腐食画像を持つ耐候性鋼を複数抽出し、それら複数の耐候性鋼の外観評点に基づいて、保証対象とする耐候性鋼の外観評点を判定します。また、それら複数の耐候性鋼の腐食環境(期間平均飛来塩分量)に基づいて、保証対象とする耐候性鋼の腐食環境(期間平均飛来塩分量)を判定します(図1)。

耐候性鋼データベースは、腐食環境として、乾湿繰返し回数、期間平均温度、期間平均湿度を収納しています。また、腐食画像の識別因子としては、さび粒径、表面の凹凸度、色味、および、それぞれのばらつきを用い、腐食画像について、同時に撮影した色見本により色調補正を行い、腐食画像に対応する板厚減少量または/およびさび層の断面解析結果に基づいて劣化を判定します。

これによって、耐候性鋼の腐食環境判定システム、耐候性鋼の腐食劣化予測システムを用いて、耐候性鋼の保証サービスや維持管理サービスと組み合わせた、耐候性鋼の販売あるいは耐候性鋼を用いた構造物の保全サービスを提供することができます。

この発明は耐候性鋼を対象としたものですが、これをヒントとして、別の製造物に適用することを考えてみてはいかがでしょうか。もちろん、各業界、製品ごとに特徴が異なります。だからこそ、その製品の特徴を抽出するための情報に置き換えてみることで、独自の付加価値化につながり、独自のソリューション提供につながると思われます。