ネイルを均一に乾かす


マニュキュアやペディキュアなど、ネイルアートを楽しむ女性が増えています。しかし、マニュキュアを塗った後には、乾燥させるための時間が掛かるため、仕事や家事、子育てで多忙な女性にとっては問題です。また、ネイルアート市場の拡大に伴い、マニュキュアを短時間で乾燥硬化させたいというニーズが高まっています。この発明は、マニュキュア等の爪塗料を均一に短時間で乾燥硬化させる発明です(特開2018-114177、パナソニックIPマネジメント)。



レーザ光の干渉性によって、乾燥が不均一になる

爪塗料は光硬化性樹脂の一種であり、固体光源によって乾燥硬化します。固体光源としては、青紫色から青色の短波長帯域の光を発するLED(Light Emitting Diode)がよく使われています。しかし、短波長の強い光を皮膚に照射することは健康上望ましくありません。そこで、カメラを用いて爪の位置を画像認識した後、半導体レーザ(LD:Laser Diode)によって青紫色から青色の波長帯域のレーザ光を、爪の位置にのみ照射することが提案されています。半導体レーザはLEDに比べて点光源性が高く、例えば微小鏡の傾きを可変できるMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラー等を用いて、レーザ光を特定位置に照射できるからです。

しかし、半導体レーザを用いた硬化装置では、光の干渉性によって、乾燥が不均一になるという問題があります。一般的に半導体レーザのレーザ光は干渉性が高く、物体に照射した場合、明るさの明暗が生じます。また、爪塗料が乾燥するときに多量のガス(有機物)が発生しますが、爪塗料の部分と光学系とが分離されておらず同じ空間内に存在するため、乾燥時に発生する有機物が半導体レーザの発光部や光学系に付着してしまいます。特に、波長が405nm付近で光密度の高いレーザ光では、有機物の半導体レーザの発光部等への付着が顕著になり、付着した有機物によってレーザ光が吸収および散乱され、光出力が所定の値に達せず、硬化能力が低下してしまいます。さらに、様々な種類の爪塗料ごとによって、あるいは、塗料を塗るときの温度や湿度などによって乾燥状態が異なり、それらに応じて光源条件(出力および照射時間など)を変えなければなりません。


爪塗料の厚みにおける光源の鮮明度を規定し、光の干渉を小さくする

この発明は、被硬化物(爪塗料、9)の位置をセンサで検出し、被硬化物の位置情報に基づいてMEMSミラー(3)が光の方向を変え、光源(2)は被硬化物の厚みの2倍における鮮明度が0.5%以下である光を放出します。

爪塗料は樹脂によって構成されているので、近紫外の光(波長帯域が400nm~460nmの光)で硬化しやすくなります。さらに、爪塗料の厚みが0.03mm以上0.07mm以下である場合、この範囲の厚みに対して光源から放出される光の鮮明度が0.5%以下であって低い鮮明度であるので、爪塗料の硬化ムラが起きにくくなります。したがって、爪塗料をさらに均一に硬化することができます。

被硬化物は硬化装置の外部に置かれることになるので、被硬化物の乾燥中に被硬化物から発生するガス(主に有機物)が硬化装置の部品に付着することを防ぐことができ、硬化装置の信頼性が向上します。また、透過部材(7)には光吸収率(光源波長における入射光量と出射光量との比)が小さい材料を用いることで、透過部材自体での光吸収を減らせることができます。これによって、光損失が減って光源の消費電力が下がるので、省エネルギー化にもつながります。


人工知能が最適な乾燥硬化状態を決定

処理回路(5)は、人工知能を有しており、最適な光照射条件を決定します。処理回路で決定される光照射条件は、例えば、光源の駆動条件、および、MEMSミラーの鏡面(反射ミラー)の角度等です。爪塗料が乾燥硬化する状態(乾燥硬化状態)は、カメラ(6)によって常時モニターされています(ステップS19)。このモニター結果は、処理回路に送られ、処理回路は、リアルタイムに常に送られて刻々と変化する各種情報(爪塗料の位置情報(ステップS13)、環境情報(ステップS14)と、乾燥硬化状態情報(ステップS19)を用いて、過去のデータベースに照らし合わせて(ステップS15)、AIによって最適な光照射条件(制御情報)を刻々と決定します。処理回路で決定された光照射条件の決定値についての信号は、光源駆動回路(12)およびMEMS制御回路(4)に送られます。これにより、光源駆動回路およびMEMS制御回路が制御を行って(ステップS16、S17)、爪塗料を乾燥硬化するのに最適な乾燥硬化状態が維持されます。