ワンタップ・レジ端末


最近では、買い物代金等のレジ精算効率化の動きが活発です。例えば、買い物客がお金を使わずに精算するキャッシュレス精算システム(GooglePayやApplePay)などがあります。買い物客側だけでなく、店員の側でも、レジ精算の際の操作を効率化させようという工夫があります(特開2018-041141、リクルートホールディングス)。



支払金額のバリエーションと、レジ端末入力の煩雑さ

コンビニやスーパーなどのPOS(Point of Sale)レジサービスでは、買い物客は、買い物の合計金額を把握し、合計金額に応じた現金を財布から出し、店員に支払います。買い物客が実際に出す支払金額は、買い物客の財布の中にある紙幣と硬貨に依存します。そのため、支払金額は、必ずしも合計金額とぴったりとは限らず、紙幣と硬貨を組合せた様々なバリエーションが生じます。例えば、買い物の合計金額が2,850円の場合、買い物客が出す支払金額は、合計金額ぴったりの2,850円(千円札が2枚、500円硬貨が1枚、100円硬貨が3枚、50円硬貨が1枚)だけではありません。2,900円(千円札が2枚、500円硬貨が1枚、100円硬貨が4枚)3,000円(千円札が3枚)、3,050円(千円札が3枚、50円が1枚)など、さまざまな組合せが考えられます。

店員は、買い物客の支払金額を目視で確認し、タッチパネル等のテンキー操作により、POSレジ端末に支払額を直接入力し、精算等を行っています。しかし、支払金額をテンキー操作で直接入力するのは煩雑であり、現金を確認しながら入力するので時間が掛かってしまいます。



提示された支払候補額を、ワンタップで選択

この発明は、店員が支払金額を直接入力するのではなく、合計金額から顧客が支払いそうな額を推定し、これを支払候補額として店員に提示する発明です。これによって、店員は支払候補額を選択するだけでよく、簡易かつスピーディにレジ精算を行うことができます。

図3Cは本発明のPOSレジ端末の例を示します。表示画面(F2)の上方には合計金額を表示するスペース(Ca1)、表示画面の下方には合計金額に基づき買い物客が支払いそうな額(支払候補額)を複数表示するスペース(Ca2)が表示されます。買い物客は合計金額に応じた現金を用意して支払いを行い、店員は買い物客によって支払われる紙幣および硬貨の組合せをおおまかに確認することで、買い物客の支払い額に一致する支払候補額を選択してタップ操作を行います。例えば、合計金額が「USD22.20」である場合、買い物客によって紙幣が2枚(20ドル紙幣+5ドル紙幣)支払われたことを確認すると、店員は支払候補額として「USD25.00」(=20ドル紙幣+5ドル紙幣)を選択してタップ操作します。このように、店員は支払金額を直接入力することなく、複数の支払候補額の中から1つの候補額を選択(タップ)するという簡単な操作で迅速な処理ができます。支払候補額を求めるアルゴリズムとして、様々な優先順位を設定することもできます。例えば、紙幣枚数(硬貨枚数)が少なくなるような場合などです。また、各国の貨幣事情を考慮して支払い候補額を決定することもできます。例えば、米国では、1ドル紙幣、5ドル紙幣、20ドル紙幣は良く使われるが、硬貨はあまり使われない、また、日本では、お釣りを切りよくもらう(1円、5円などを使う)人が多いなど。



ディープラーニングによって、紙幣(矩形)と硬貨(円形)を推定する

応用として、POSレジ端末にカメラを搭載し、顧客によって支払われる貨幣を撮像し、貨幣画像データに基づいて、支払候補額を複数推定するとともに、推定される貨幣の組合せから最も可能性の高い支払候補額を表示することも可能です。POS管理サーバー内の支払候補額推定部は、受信した貨幣画像データから、紙幣(矩形)と硬貨(円形)を抽出し、紙幣、コインのそれぞれについてディープラーニング等の機械学習を利用して種類と枚数を把握します。

例えば、合計金額が「USD8.5」の場合、貨幣画像データを解析することで、5ドル紙幣が1枚、25セント硬貨が2枚、種類不明の矩形の紙幣が認識できたとします(図10)。この場合、貨幣画像データから認識できた金額は「USD5.5」(=5ドル紙幣+25セント+25セント)であり、かつ、その他1枚の紙幣が認識されているkとから、支払うべき金額「USD8.5」を考慮すると、その他の1枚の紙幣は5ドル紙幣である可能性が最も高いことが分かります。そこで、支払候補額推定部は、支払候補額のうち、「USD10.5」(=5ドル紙幣+5ドル紙幣+25セント+25セント)を、最も可能性の高い支払候補額として決定します。